集会では、住民投票に詳しいシンクタンク「国民投票広報機構」の南部義典代表が講演に立ち、地方自治が守らねばならないポイントを2つ紹介した。
1.国から負担や不利益を教えつけられないこと。
2.地域のことは地域で決めること。
この真逆になったのが、たとえば原発や米軍基地であり、これら施設が固定化されると被害はその地域だけに限られてしまうと強調した。この指摘には参加者の多くが頷いた。そして南部さんは、住民投票を具体的にどういう順番で行うかを説明した。大雑把には以下の流れだ。
①請求代表者(署名の責任者)を決めて、地域の選挙管理委員会に届ける(現在11人)。
②署名を始める。期間は1カ月間。有権者の50分の1(6721人。2019年12月2日時点)以上を集める必要がある。
③署名を選管に提出して、有効と認められれば、請求代表者は区長に直接請求する。
④20日以内に区長は区議会を招集する
⑤区議会が「羽田新飛行ルートの是非を問う区民投票条例」案を可決する。
⑥区民投票条例を施行し、区民投票を実施する。
区民投票に必要なのは「受任者」の確保。その登録用紙。目標は500人
ここで区民がもっとも気になるのが、⑤だ。果たして区議会が条例案を可決するのかということだ。というのは、現在、品川区議会には40人の議員がいるが、条例案に賛成するとみられるのは15人に留まっているからだ。これをどう突破するのか。
品川区では、数年前から市民団体「羽田増便による航空飛行ルートに反対する品川区民の会」が新ルートへの反対運動を続けているが、そのメンバーの大村究(きわみ)さんが集会の様子をビデオ撮影していたので、この点を質問するとこう答えてくれた。
「だからといって残り25人が絶対反対ということでもない。グレーゾーンの議員もいるんです。これら議員が気にするのは、署名が多く集まったときに自分が反対すれば、次の選挙に響かないかということです。だから、署名はなるべく多く集める必要がある。ギリギリの6721人じゃダメ。3万人は狙いたいです」
これを成功させるのにキーとなるのが、署名収集協力者である「受任者」だ。「成功させる会」には1月18日現在で約200人の受任者がいるが、これを1月末までに500人に増やしたいとしている。受任者になるための説明会が1月24日から順次開催されているが、詳細は
「支える会」のHPを参考にしてほしい。
羽田空港新ルートでの一つの問題は、マスコミ報道が少ないことも一因だが、騒音被害がイメージできないのか、危機意識のない住民が少なくないことだ。南部さん(前出)はこんなアドバイスもした。
「区民投票の実現には3か月はかかります。大切なのは、どのタイミングで署名活動をするかです。今から始めるのか、それとも、実際に3月29日に新ルートの運用が始まり騒音が起きると問題意識が高まるので、その時点から始めるかです」
実際の署名活動の開始時期は未定であるが、「成功させる会」は受任者を集めるためにすでに街角に立っている。1月19日のフェイスブックにも関係者が「1月25日(土)の受任者説明会への案内と受任者募集のチラシを撒きました。マンションの住民がポスティングしてくれると言って半分以上のチラシを持ち帰り、受任者を受けてくれました」との報告を寄せている。
また、区民の有志は同時に国を相手取る訴訟も考えているが、詳細は決まり次第報告したい。
そして、東京23区の半分以上の区では羽田空港新ルートに反対する市民団体がいるが、区民投票に臨むのは現時点では品川区だけ。だが、集会には他の区民も顔を見せていた。今後の運動の広がりを注視したい。
<文/樫田秀樹>