労働運動の衰退した社会と自己責任論。関西生コン弾圧をめぐって<佐高信×木村真>
連帯ユニオンの関西地区生コン支部(関西生コン)の組合員が述べ81人も逮捕される事件が起きている。関生が孤立する背景には何があるのか。前回の対談では、労働組合運動が衰退し、関西生コンだけが突出して孤立しているという指摘があった。
ではなぜ労働組合運動が後退したのか。ジャーナリストの佐高信さんと大阪府豊中市の木村真(きむらまこと)市議に話を聞いた。
――前回の対談で、関生以外の労働組合が闘わなくなってしまっているというお話がありました。なぜなのでしょうか。
佐高:高度成長期に大手の組合は企業の分け前に与って潤っちゃった。非正規の人たちにとって今の連合のような存在はむしろ敵だったんだよね。敵というか、自分たちの利権だけを守る傾向があった。労働組合も経営参加という形で組み入れられていったでしょう。松下電器が組合の委員長を役員にしたりもした。あの辺りからズブズブと闘争心を失っていったんだよね。
木村:やっぱり企業別に組織されているところが弱みですよね。会社が儲からなかったらどうしようもない、会社が潰れたら終わりだということで企業の論理に絡め取られていってしまう。もともと組織率が低い上に、大半が会社の言いなりの「御用組合」なので、労働組合運動っていうのは、かなり停滞してしまっている。
木村:高度経済成長の間は、会社も利益が上がるんで、賃上げもどんどんしてくれた。だから社員の生活は安定するようになってきた。
その後バブルが弾けて低成長の時代に入ってきて、構造的に利潤が上がらない状況になってきた。すると企業は生き残りのために、人件費を削ろうとして派遣や非正規を増やしていく。
その時に、まさに企業別労働組合という弱みが出てきた。とにかく会社が生き延びないといけないという理屈に絡め取られてしまったんです。同じ職場で働いてる労働者がまったく違う待遇で、細切れ雇用で働いてるってことについて、組合員は全く関心がない。非正規の労働者は組合に入れないわけだから。
そうするといわゆる非正規労働者にとっては、既成の労働組合、大きな労働組合ってのは、既得権益を守るための団体という風にしか映ってないんですよね。だからまったく魅力のない集まりになってしまっている。
佐高:だから経営側がある種先取りというか、賃上げだけはやってきて、それで非正規というものが増えた、という。で、みんな自分たちだけの生活を守るという風になってしまった。
木村:自治労なんかもね、自治体の職員組合は、いわゆる正職員以外はそもそも組合に入れないらしい。だから、正職員以外の人たちは、別の組合に入るそうなんです。自治労として組織してないわけじゃないようですけれども、同じ自治体の職員でありながら、正職員と非正規では別の組合になっている。地方公務員法の「職員団体」の規定が関係しているらしいので、たぶん全国どこでもそうなんじゃないかな。
一つの職場の中でも、正社員・契約社員・アルバイトやパート・派遣社員等々、いろんな雇用形態があって、労働者同士が分断されて孤立して、「連帯」っていう意識がすごく芽生えにくい状況に放り出されてるわけですね。でもそれでは、経営側に全然太刀打ちできないんですよ。
企業別に組織された日本の労働運動
非正規雇用の労働者を組織できない
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