前述の夫が妻を心配せず、まず「俺の飯」を聞いたのは、人格の基礎にある性別役割分担等のモラ文化、具体的には「妻は、夫のため夕食を作って待っているべき」という価値観から、「俺の飯はどうした」との思考が自動的に沸き上がってきたのだろう。
この自動思考は、人格の異常性からではなく、内在化しているモラ文化から生じている。
話題の俳優・東出昌大氏も、温かい食事が用意されていないと怒って外へ飲みに行ってしまったと自ら告白していた。
これは、モラ文化を内在化させていたと推測される。
多くのモラ夫は、下半身もだらしない(
第31回参照)。女性性を消費の対象と捉えているので、不貞や風俗通いに抵抗がない。
東出氏も、その例に漏れなかったようだ(
参考:日刊ゲンダイDIGITAL)。
なお、下半身がだらしない夫の妻ほど、「うちのはモラだけど、女性関係は問題ない」と信じる傾向がある。私が「本当に女性問題、風俗通いはありませんか」と訊くと、猛然と反論する被害妻も少なくない。
前述の妻は家を出て、離婚調停を申し立てた。夫は反省して、加害者更生プログラムに数回通ったという。調停委員に対して、妻に酷いことを言ったことを反省し、プログラムに通い、現在はモラ夫ではないと主張した。
しかし、何度でも言うが、謝罪し反省しただけではモラ体質は治らない。
加害者プログラムに数回通って、健全な立ち振る舞いを学んでも、本質は変わらない。モラ夫を直すには、人格の基礎に内在化しているモラ文化を書き換える必要がある。それには、少なくとも2~3年の期間と日々の努力が必要である。
そもそも、妻の気持ちがすっかり冷めて、心が遠のいたことを理解せず、「俺はもうモラ夫ではない」と自らを正当化し、追いかけまわすこと自体が、モラ思考と言っても差し支えない。
そんなモラ夫とは早期に別れることが正解である。
<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>