安倍首相と枝野代表の「施政方針演説」を比較してみた

国会議事堂

まちゃー / PIXTA(ピクスタ)

施政方針演説とは

 2019年度補正予算が1月30日に成立し、やっと2020年度についての議論が国会で始まりました。それに先立ち、通常国会の冒頭で行われた施政方針演説と代表質問を振り返ってみましょう。本来であれば、施政方針演説を受けて次年度の予算案審議が始まるのですが、その間に今年度の補正予算審議が挟まってしまい、施政方針演説と予算案の関係が分かりにくくなっています。  施政方針演説とは、毎年の通常国会の冒頭で、内閣総理大臣によって行われる演説のことです。財務大臣による財政演説、外務大臣による外交演説、経済財政担当大臣による経済演説と合わせて、政府四演説とも呼ばれます。政府演説は、第1回帝国議会から始まり、国会の先例に基づきます。  ちなみに、臨時国会の冒頭における首相の演説は、所信表明演説と呼ばれ、施政方針演説と区別されます。施政方針演説が、次年度(及びそれ以降)の政府方針を示すのに対し、所信表明演説は、臨時国会の期間を中心とする当面の政府方針を示します。  つまり、施政方針演説は、政府の基本方針を示すもので、他の政府演説よりも重要となります。政府の予算案は、施政方針演説で示された基本方針を支出面で具体化したものといえます。  ですから、予算委員会では、予算案そのものはもちろんのこと、施政方針演説で示された政府の基本方針や、政府演説で触れられなかったテーマの方針、政府をめぐる様々な問題などが、あわせて審議されます。名称は「予算委員会」でも、実際の機能は「国家基本政策委員会」なのです。なお、同じ名称の委員会は、別にありますが、そこはいわゆる「党首討論」のみを行う場で、名称どおりの機能を果たしていません。国会をウオッチする際には、こうした「見かけ」に惑わされないようにすることがポイントになります。

政府と野党それぞれの「施政方針演説」

 2020年の通常国会では、安倍晋三首相が施政方針演説で政府方針を示したことに加え、立憲民主党の枝野幸男代表が代表質問において、実質的な野党ブロックの基本的な政策方針を示しました。国民民主党の玉木雄一郎代表や日本共産党の志位和夫委員長も、自党の方針を示しましたが、相対的には個別具体の問題に力点を置いていました。あたかも、政府が施政方針演説で基本方針を示し、他の大臣の演説で個別具体の方針を示したように、枝野代表が基本方針を示し、玉木代表と志位委員長が個別具体の方針を示したようなかたちになりました。  そこで、安倍首相の施政方針演説を与党ブロックの基本方針、枝野代表の代表質問を野党ブロックの基本方針と捉え、読み比べてみましょう。与党ブロック(自民党・公明党)と野党ブロック(立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党等)の国家方針の違いが、浮き彫りになるはずです。
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国家のための国民か、国民のための国家か
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