安倍首相と枝野代表の「施政方針演説」を比較してみた

「平等よりも競争」か「競争よりも平等」か

【社会政策方針】 安倍首相:働き方の変化を中心に据えながら、年金、医療、介護全般にわたる改革を進めます。(略)年齢ではなく、能力に応じた負担へと見直しを進めます。(略)女性も男性も、若者もお年寄りも、障害や難病のある方も、更には一度失敗した方も、誰もが多様性を認め合いその個性を活かすことができる社会、思う存分その能力を発揮できる社会を創る。 枝野代表:老後も、子育てや教育も、かつては個人や家庭に委ねられていました。しかし、今の日本では、いずれも自分の力だけではどうにもなりません。自己責任に帰すのでは不安が広がるばかり。今こそ、自己責任論から脱却し、社会全体で「支え合う安心」の仕組みを構築しましょう。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※  一見すると、両者に大きな違いはないようですが、全体の文脈も含めると、違いが見えてきます。安倍首相の演説を注意深く読むと、「平等」という視点が弱いと分かります。全体として、かつての東京オリンピックのエピソードを多く援用し、頑張る人を称賛しています。その文脈を踏まえて上記の演説を読むと、誰もが頑張れる社会を目指し、結果として頑張れない人や能力を認められない人への視点がありません。  他方、枝野代表は、自己責任社会からの脱却を強く訴え、結果として頑張れない人や能力を認められない人も含めて支え合う社会を目指しています。  つまり、安倍首相は「平等よりも競争」の方針で、枝野代表は「競争よりも平等」の方針です。

政府運営方針を示さなかった安倍。公正な行政運営方針を明言した枝野

【政府運営方針】 枝野代表:「支え合う安心」も、適正公平に「豊かさを分かち合う」ことも、民間だけでは、市場原理では実現できません。(略)現状は、「民間でできないことまで民間へ」。背負うべき役割まで放棄した「小さすぎて無責任な政府」になっています。(略)「小さな政府」幻想から脱却し、必要なことには「責任ある充実した政府」を、そして「民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ」「まっとうな政治」を取り戻します。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※  どのような政府を形成し、運営していくのか、安倍首相の施政方針演説には、残念ながら示されていません。森友学園問題、加計学園問題、自衛隊日報問題、公文書・統計改ざん問題、桜を見る会問題、大臣や政府高官をめぐる問題など、国家方針や政策方針、予算執行の大前提となる政府運営において、様々な疑義がある中、政府運営方針を示さなかったのは、そのこと自体、問題といえます。  他方、枝野代表は、新自由主義的な「小さな政府」からの転換と公正な行政運営の方針を明確に打ち出しました。安倍政権の政府運営方針については、現在の政府の主体であるだけに、今後の予算委員会で議論を深めていくことが不可欠です。
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明確になった与党ブロックと野党ブロックの国家方針の違い
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