「送料」は「無料」じゃない! 「送料無料」を喧伝する裏に潜む運送業軽視
前回までは、トラックドライバーが教える「雪道の走り方」を数回に分けて紹介したが、今回は、連日報じられる「楽天の送料無料化」のニュースに、元ドライバーとして感じる昨今の「顧客至上主義」について綴っていきたい。
1月25日、作業服・関連用品専門店「ワークマン」が、楽天市場からの撤退を発表した。
「ワークマン楽天市場店」のサイトによると、同店は2020年2月28日をもって閉店。注文を1月31日16時までとし、2月14日16時までに支払いが確認できない注文についてはキャンセルするという。
撤退の主な理由は、楽天が打ち出した「送料無料化」だ。
ワークマン撤退宣言の数日前、楽天は3月18日から3980円以上購入した客に対して一律「送料無料」とする施策を発表。しかし、実際発生する送料が店舗出店者の全額負担とされたため、「送料が商品価格に転嫁され、利益を削る競争が激化する」と多くの反発の声が上がった。
これを受け、楽天市場の店舗で構成されている団体「楽天ユニオン」は、同社の送料無料化が独占禁止法の「優越的地位の乱用」にあたるとして公正取引委員会に調査を求める陳情書と署名を提出。
その後、同委員会が出店者らに事情聴取を始めるという騒ぎになっているが、楽天の三木谷浩史会長兼社長は「Amazonに負けている理由は“送料”。(送料無料の取り組みは)何が何でも成功させたい」と語気を強めている。
同件の動向を見守っていた筆者にとっては、出店者の撤退や独禁法抵触疑いなど想定通りの結果となったのだが、なによりも今回、元トラックドライバーとして改めて抱いたのは、「送料無料」という言葉に対する強い違和感だった。
一連の報道により連日耳にするようになった「送料無料」という言葉。
この表現に対し、これまで過去記事「『トラック運転手は“底辺職”』!? 謂れなき偏見に物申す」などでも言及してきた通り、日本の運送業界を知る筆者としては大変やりきれない思いになる。
いわずもがな「無料」は本当に無料であるわけではない。サイトに「無料」と記されていても、実際モノを運ぶのには送料がかかる。
にも関わらず、その送料を「ない」ものと表現したうえ、プラットフォーマ―、出店者、消費者の間で押し付け合う様は、実際荷物を送るトラックドライバーたちからすると、自らの労働に対する価値を否定されたような気分になるのだ。
以下は、筆者が集めたドライバーの肉声である。
「インフラを支えているというプライドだけでここまでやってきているが、この送料無料という響きはモチベーションが一気に下がる」
「配送料無料じゃなくて配送料お店負担とか表記してもらいたい」
「直接赴いて買いに行かないのに無料とか都合よすぎる」
「送料は楽天が全部負担します!ならカッコ良かったんですけど」
「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。
ワークマン撤退の理由は、「送料無料」
「送料無料」という言葉に違和感を抱くドライバーは少なくない
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