nonpii / PIXTA(ピクスタ)
筆者はビジネススキルを向上させる演習プログラムを実施している。なかでも、顧客や他部門の人、上司や同僚や部下を巻き込む言動を身につける演習では、話し手と聞き手の2人一組でロープレをする演習を繰り返す。
この演習では、話し手は自分のスマホで自撮りをしながらロープレをする。ロープレが終わったら、
録画を自分で見て、次のロープレで修正したい点を自分で見極める。次のロープレではその点にフォーカスして話法を修正していく。
録画を確認するときには、真面目に見ないほうがいい。このように申し上げると、「逆ではないか」「研修なのだから真剣に見ろというべきではないか」という声があがる。
しかし、根詰めてみて、いろいろな修正点に気づいて、あれも、これも、それも、
一気に修正しようとしても、修正できる人は皆無なのだ。
録画を見て、一番気になることを一回気づいて、
次のロープレでひとつ修正することが、スキル向上の早道だ。したがって、あえて、根詰めてビデオを見ないで、ぼんやりと見て、
感覚的に違和感を覚える点を見極めることをお勧めしている。
自分の話法の録画を自分で確認するということは、聞き手になったつもりで見るということだ。
実践の場面での聞き手が、話し手の話し方について、どこがよいかわるいか根詰めて聞いていることはほとんどない。それでも聞き手に違和感を与えてしまうことが多いので、ぼんやりとビデオを確認するということは、それだけ実践的なのだ。
真面目にやらない、根詰めないということは、ロープレ後にビデオを確認する際だけでなく、これからロープレをする際にも言える。ロープレを始める前に、「それでは何を話すか、まずは考えて準備しましょう」「話す内容を演習シートに記入しましょう。それからロープレしましょう」という方法をとるやり方がある。
しかし、私は
事前の準備や下書きの時間を一切とらない。時間がないからではない。準備したり、下書きしたりしてしまうと、演習効果が減殺されるからだ。
私の演習プログラムでは、これからロープレをする際に、何を話すか準備したり、下書きをしたりしないで、早速ロープレを始める。
ロープレをしながら、話す内容をその場で考えたり、修正したりしていく。話が詰まったら、間を置いて話せばよい。話す内容が間違ったと思ったら、言い直せばよいからだ。
考えてみれば、現実のビジネスの場面で、相手と話していて、自分が話すタイミングで、相手に対して、「ちょっと待ってください。今から何を話すか考えて準備しますから」「下書きしてから話しますから」などと言うことなど、あるはずがない。
実際のビジネスの場面は、瞬発力発揮の繰り返しだ。