バンコクの旅行博に出店するJR東日本や自治体、企業など
インバウンドに「伸び悩み」の兆しが見えてきたと言われる中だが、いまだタイでは日本旅行ブームが続いている。
かつてはビザ取得がなかなか適わなかったこともあり、2013年7月にタイ人に対する短期査証免除になってから爆発的な人気になった。タイは大まかには乾季と雨季のふたつの季節しかなく、通年気温が高いので季節的な風物詩はそうあるものではない。一方、日本は春夏秋冬で見える姿が違うので、何回行っても飽きることがないようだ。
タイに暮らして約20年の筆者は、移住したばかりのころ、よくタイ人からビザの取得に関する相談を受けた。日本のビザは厳しいという噂があったが、実は単にビザ申請を行うタイ人が必要書類を用意できていないだけで、それほど難しいことではない。実際、短期査証が免除になったのは、同年にタイ航空が札幌直行便をタイから飛ばし、その際に雪祭りが注目されたこともきっかけのひとつだ。ちゃんと書類を揃えることのできるタイ人たちの間で日本ブームがすでに始まっていて、それを見た日本政府が免除に動いたという面もある。
そうして誰でも日本に行けるようになり、かつ格安航空会社も多数日本の各都市にタイから直接乗り入れるようになったので、なお日本が近くなった。リピーターも多く、当初は「東京と大阪ならどっちに行くべきか」と訊かれたものだが、今は「
東京の○○の通りならどんなおいしい店がある?」といった、地元民しか知らないような質問が出てくるほどマニアックになっている。
日本を旅行するタイ人は主にテレビやネットで旅先の情報収集をする。日本旅行を専門に紹介する番組もあるし、ネットなら無数に日本観光レビュー・ページがある。タイ人が紹介していること、また徐々にマニアックになりつつあることから、日本人が思いもしない地域がタイでブームになることもある。たとえば、
タイのドラマが2015年に佐賀県で、2018年に山形で、2016年は北海道で映画撮影が行われたことで、タイ人が訪れる場所となった。日本ブームの当初は
静岡県御殿場のアウトレットがタイ人の定番スポットでもあったし、今は成田に近く、かつ見所の多い
千葉県にタイ人が増えつつあるという。
このように
タイ人にはタイ人の琴線があって、そこに触れることでタイ人客を集めることができるようだ。