田村智子議員「桜」質疑はどう組み立てられたか?ーーしんぶん赤旗日曜版・山本豊彦編集長との対談を振り返って(第1回)

Part3:安倍事務所が「桜を見る会」の参加者を募集

 上記に見たように、自分は招待者の人選には関与していないかのような安倍首相の答弁を得たうえで、Part3では田村議員はいよいよ、安倍首相本人の問題に切り込んでいく。安倍事務所が後援会関係者に対し、「桜を見る会」への参加を募っていたこと明らかにしていくのだ。  まず紹介したのは下関市選出の友田有・山口県議会議員のブログ。「後援会女性部の7名の会員の方と同行」し、「早朝7時30分にホテルを出発し貸切りバスで新宿御苑に向かい、到着するとすぐに安倍首相夫妻との写真撮影会」があったとの内容を紹介し、安倍首相自身も後援会関係者を多数招待しているのではと問うが、安倍首相は萩生田大臣と同様に、 「例えば地元において自治会等々で、あるいはPTA等で役員をされている方々もおられるわけでございますから、当然そういう方々とこれは後援会に入っている方々がこれは重複することも当然あるわけでございまして、そういう中で招待されているものと承知をしております」 と答弁。このように「言い訳」をさせた上で、より核心に踏み込んでいった。  なお、この時点で、大塚官房長からは推薦者・招待者に関し、「一連の書類につきましては、保存期間一年未満の文書として終了後遅滞なく廃棄する取扱いとしている」との答弁を得ている。  この段階に至って初めて田村議員が紹介したのが、安倍首相の地元・下関市の後援会関係者の方に「しんぶん赤旗」日曜版が現地取材を行って得た証言だ。2019年の参加者の証言として、 「2月頃、下関市の安倍事務所から、桜を見る会に行きませんかと案内が来た、名前や住所などの必要事項を紙に書いて安倍事務所に送り返すと、内閣府から桜を見る会の招待状が届いた、安倍政権になってから毎年参加している、下関からは毎年数百人が上京する」 と紹介された。  安倍事務所が参加者を募り、内閣府から招待状が届くのであれば、安倍事務所が招待のプロセスに関与したことは否定しようがない。それに対し安倍首相は 「これは、先ほど赤旗の取材に私の後援者が答えたということは、私も寡聞にして存じ上げないんですが。  そこで、今、もう既に申し上げておりますように、個別の方については、招待されたかを含め個人に関する情報であるため回答を差し控えさせているというのが従来からの政府の立場でございます」 と答弁する。 「赤旗の取材に私の後援者が答えたということは、私も寡聞にして存じ上げないんですが」というのは、「そんなことするわけがないだろう」という印象を与えて、証言の信憑性を疑わせる作戦だったのかもしれない。しかし、実際に「しんぶん赤旗」日曜版は、現地取材で複数の方からそのような証言を得ていた。なぜそのような証言を得ることができたのかは、第2回の記事で紹介したい。

Part4:税金を使った公的行事

 Part4は、ここまでのまとめだ。Part3の最後で、上述の安倍首相の答弁に対し田村議員は、 「これね、開催要領の逸脱が疑われているんですよ。各界を代表する、功労・功績があった方を、府省がとりまとめて招待するんですよ。これ以外ないんですよ」 と指摘していた。開催要領に従えば功績・功労がある人が招待されるのが「桜を見る会」であるのに、証言によれば、安倍事務所が後援会関係者の参加を募っていたことのおかしさを指摘したのだ。その上でここで田村議員は次のように指摘した。 「これね、今、後ろ(野党議員)からもありました。税金を使った公的行事なんですよ。(「そうだ!」)  誰でも参加できるわけじゃないんですよ。(「そうだ!」)  だから、招待範囲も人数も、開催要領を閣議に配って、それで府省からの推薦で、功労・功績が 認められる方を招待するんですよ。  そしたらね、当然、それぞれの方にどのような功労・功績があるのか、これ、説明できなきゃおかしいですよ。 (「そうだ!」)  それが、桜を見る会なんじゃないんですか、総理。総理、お答えくださいよ。そういうものでしょ。」  しかし、田村議員が安倍首相に答弁を求めているにもかかわらず、大塚房長が手を挙げた模様で、金子原二郎予算委員長は「大塚官房長」と指名する。それに対し、田村智子議員は、「あなた(大塚官房長)、もういい、もういい、もういい。手、あげないで」と強くそれを制し、安倍首相に答弁を求めた。  安倍首相は答弁に立ったが、 「先ほど来、答弁をさせていただいておりますようにですね、桜を見る会については、 昭和27年以来、内閣総理大臣が、各界において功績・功労があった方々をお招きをし、日頃の労苦をですね、日頃の労苦を慰労するため、開催をしているものでございます。  で、先ほど来、申し上げておりますようにですね、個々の方々につきましてはですね、個人情報であるため、回答を控えさせていただいているということでございます」 と、あらかじめ用意した答弁書に目を落として棒読みするのみで、まったく説明責任を果たそうとしなかった。  そしてこれ以降、安倍首相も大塚官房長も、招待者については「個人に関する情報」や「セキュリティ」を理由として具体的な説明を拒否し、「功績・功労」というそれまでの説明の言葉は口にしなくなった。
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「お答えは差し控えたい」一辺倒
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 第2回は昨年11月8日の質疑に生かされた昨年10月13日のスクープが、どのような問題意識のもとに、どうやって調査・取材されたのかを振り返る。毎年の「桜を見る会」を取材していた大手メディアではないからこそ、問いが立ったという点に注目す、第3回は、昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープに他紙が追随せず、田村議員の昨年11月8日の質疑に対しても当初、大手メディアの注目が遅れたのはなぜかという、既存メディアの問題を考察する。近日公開予定