このままでは横浜カジノは止められない。住民投票とリコールの足の引っ張り合いを防ぐための提言

住民投票と市長リコールは全くの別物

 また、もう一つの重要な前提知識である住民投票条例の制定と市長の解職請求(リコール)の違いについても解説する。この2つはともに直接請求(住民の発意で地方公共団体に一定の行動をとらせるもの)ではあるが、その条件や効力は全くの別物である。 <住民投票条例の制定>
住民投票条例の制定の流れ

図1:住民投票条例の制定の流れ

 流れは上図「1.住民投票条例の制定の流れ」に整理した。  以下、ポイントを抜粋する。 ●必要署名数: 6万2446筆以上(横浜市の2019年7月の有権者数に基づいて算出。有権者総数の50分の1以上) ●必要署名数が集まった場合の効力: 住民投票条例の制定を請求できる ●主な懸念事項: ・条例制定請求を受理した後の議会招集までの「20日以内」という期限はあくまでも努力規定であり、法律上の義務がない。カジノ推進派である林市長が時間稼ぎをする恐れがある。 ・林市長が反対意見を「付議」する恐れあり *原発稼働の是非を問う2011年東京都の住民投票では都知事が反対意見を付議した事例あり ・議決までの期限が定められてないため、市長およびカジノ賛成派である自民・公明の市議によって延々と「議論中」と時間稼ぎされる恐れあり ・議決に進んだとしても、横浜市議会はカジノ賛成派の自民・公明が過半数を占めているため、住民投票条例の制定は議会で否決される見込み。 *現に2019年9月にカジノ補正予算は問題だらけと分かっていながら自公の賛成多数で可決されている 〈参考記事:ハーバービジネスオンライン「問題だらけの横浜カジノ補正予算案。明るみになった12の事実」(2019年12月26日)〉 ・もし住民投票条例の制定が議会で可決されて、住民投票でカジノ反対が過半数を超えたとしても、住民投票結果には法的拘束力が無いため無視される可能性が高い。 *事実、昨年2月の辺野古埋め立てに反対する沖縄住民投票では9割以上が反対したが、国に無視され、埋め立て工事は続いている。 <市長の解職請求(リコール)>  次に、市長の解職請求(リコール)について。流れは下図「2.市長の解職請求(リコール)の流れ」に整理した。
市長の解職請求(リコール)の流れ

図2:市長の解職請求(リコール)の流れ

 以下、ポイントを抜粋する。 ●必要署名数: 49万0285筆以上(横浜市の2019年7月の有権者数に基づいて算出。有権者総数が80万を超える場合、80万を超える数の8分の1 + 40万の6分の1 + 40万の3分の1の合計以上) ●必要署名数が集まった場合の効力: ・解職請求を行い、60日以内に解職投票が告示される。住民投票のように林市長や市議会が時間稼ぎをする余地はない。 ・解職(リコール)投票で賛成が過半数を越えれば即日、市長は解職(リコール)される ・法的拘束力がない住民投票と異なり、解職投票の結果は法的拘束力があるため絶対的。 ●主な懸念事項: ・必要署名数は有権者の約6人に1人に相当するほど多い。2ヶ月以内に集まらない恐れがある *住民投票条例の制定の必要署名数(約6万2千筆)より8倍近くも多い

住民投票条例の制定と市長の解職請求(リコール)の比較

 ここまで2つの直接請求を比較した結果を下図「3.住民投票条例の制定と市長の解職請求(リコール)の比較」に改めて整理した。
住民投票条例の制定と市長の解職請求(リコール)の比較

図3:住民投票条例の制定と市長の解職請求(リコール)の比較

 市長の解職請求(リコール)は必要署名数(有権者数の約6人に1人以上)を集めるハードルが高い反面、署名が集まった後の効力は絶大であり、手続きも迅速に進められることが分かる。一方、住民投票条例の制定は必要署名数(有権者の50分の1以上)は少ないものの、法的拘束力は無いため効力は限定的であり、市長や議会が時間稼ぎできるタイミングが随所にあるため迅速さにも欠ける。
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明らかになってきたタイムリミット
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