モラ夫との調停では、離婚したい理由をわざわざ示す必要はない<モラ夫バスターな日々43>

モラ夫との離婚調停を成功させるための3つのポイント

 離婚裁判では、当事者が離婚理由を主張・立証すれば、裁判官は離婚理由の有無を判断し、相手方の意向に反しても、離婚判決を出してくれる。ところが、調停においては、調停委員会は事実認定を行わず、司法判断も示さない。協議、調停においては、モラ夫も同意しないと離婚は成立しない。  では、離婚理由の提示を求められたら、何を示せばよいか。モラ夫がこの結婚を諦めて、離婚に応じたいと思うような書面を作成し、提出するのが良い。具体的に何を書くのか。重要なポイントは、3つある。 ① 離婚の決意が固いこと。いつ頃から離婚を考え始め、いつ離婚を決意したのか。離婚の同意が得られなければ、裁判に進むこと。万一、裁判で認められなくても、何度でも、離婚裁判を申し立てることなど、決意の固さを表現する。 ② 何が起きようが、どのような調停、裁判の結果になろうが、絶対に再同居しないこと、二度と相手方の妻にはならないこと等。 ③ 価値観を共有しておらず、婚姻関係の継続は不可能であること等。特に、モラ夫が絶対に譲れない価値観を強く否定するのが効果的である。  離婚実務の経験からは、払うべきものをしっかりと払わせた方が、モラ夫は痛みを学習し、後腐れの可能性が減る。したがって、経済的諸条件は、相場通りの適正な額を要求するのがよい(第40回参照)。モラ夫を怖がって請求を遠慮すると、足元を見られて、離婚後も付きまとわれる可能性が高まる。  面会交流は難しい問題である。家裁は、面会原理主義なので、何が何でも面会を実行させようとする。まず、子が面会を嫌がっている場合、相応の理由があるはずなので、専門家に相談(できれば依頼)し、家裁と対決する必要がある。同居時に父と仲が良く、親子関係に問題がないと思えても別居し、「父からの安全」が確保されると、面会を嫌がり始めることは決して少なくない。  モラ夫の母親に対する攻撃を少しでも食い止めるため、あるいは、自らに対するモラを避けるため、父親に迎合的になる子どももいる。子どもが盾になってくれることに甘えて、子を犠牲にするのは間違っている。子どもの真意や精神状態を見極めるため、別居直後からの面会交流は避けて、しばらく子どもの様子を見るほうが良い。

結局、結婚とは何だったのか

 以上、妻が決意すれば、モラ夫とはいずれ離婚できる。単に手続きと時間の問題である。どこまでの手続きが必要で、どの程度の時間がかかるのかは、どこまでモラ夫が抵抗するかにかかっている。  そして離婚が成立すると、妻は日々苦しめられてきたモラから解放され、再び自由を得て、至福を味わう。離婚弁護士はその幸福な顔を見るたびに、その妻の、それまでの苦しみの深さを知ることになる。  苦しめられ、その頸木から逃れるために、大きなエネルギーと勇気を必要とする。結局、結婚とは何なのだろうか。 <文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。コロナによる意識の変化を活動に取り込み、リモート相談、リモート交渉等を積極的に展開している。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
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