漫画/榎本まみ
「3か月も、我が子と会ってないんです」とアラサーの夫は、妻の代理人である私に不満を述べた。
年下の妻の話では、彼は、ソフト・モラ夫で、行動監視が厳しく、スーパーに行くことすら彼の許可が必要だった。生活費は、一日あたり1000円以下とされ、月末にレシートと引き換えに現金を手渡された。妻は、家事、育児を1人でこなし、夫は全く手伝わなかった。そもそも夫は、子どもには一切関心がなかった。夜泣きすると、夫が怒るので、子どもを抱えて夜の公園をさまよったという。
若い世代はモラ男が減っているのではないか。大学の教員や、若い世代(20代、30代)の方からときどき、訊かれる。
男子学生を見ても、まわりの夫婦を見渡しても、モラ男・モラ夫は少ないとコメントが付くことが多い。確かに、離婚弁護士としての実務経験からは、若い世代の男性では、大声で怒鳴り、怒るハード・モラ夫、DV夫は減ってきているように思う。他方、ソフト・モラ夫はむしろ増えている。
しかし、まずモラスイッチの入る前のモラ夫予備軍は、正常男子/非モラに擬態するので、表面的に若い世代にモラ男が少なく見えるのは当たり前である。
例えば、ある男性は、40代半ばに部長に昇進して年収が1000万円を超えて、モラスイッチが入った。彼は、昇進以降、
多少物事を言い過ぎるようになったことを認めている。(なお、妻からみると、「多少」ではなく「常に」であり、彼の認知には歪みがある)。そして、言い過ぎる(つまりモラ)の理由として、昇進が「男としての自信」につながったからと述べた。
モラ夫になる原因は、社会化の過程で人格の基礎部分に内在化されたモラ文化にある。なかでも、その中核は、男尊女卑と性別役割分担である。
口先で男女平等を言ったとしても、人格の基礎部分に性別役割分担意識があれば、モラ夫予備軍と考えてよい。特に、夫婦フルタイムでの共働きで、家事、育児を平等に担当しない男性は、性別役割分担意識の下、共働きであることを無視して、家事育児は女の責任と考えているはずだ。
つまり、既にモラ夫か、もしくはモラ夫予備軍なのである。