クレーマーの文句で除夜の鐘をやめる日本、クレーマーを撃退するタイ

「微笑みの国」の人でも許せないことがある

ワットパクナム

インスタ映えすると日本人が殺到する寺院「ワットパクナム」。この天井画の部屋で逆立ちなどをする人がいるという。当然ながら、寺院でありタイ人はお参りをしているので、騒ぐことは許されない

 タイ人は、観光で訪れるとなんでも受け入れてくれるオープンな性格をしているように見受けられるが、自国の文化や伝統、宗教に関してはかなり保守的な考え方をする人も多い。南国なので外国人はラフな服装で歩きたがるが、タイ人はそれをよく思っていないことも多いほどだ。  以前、「インスタ映え」するからと寺院の中で逆立ちしたりする日本人が顰蹙を買っているということを報じたが、それもこうした背景が原因である。
タイでは休みの日には寺に行くことが普通であるほど仏教が浸透している

タイでは休みの日には寺に行くことが普通であるほど仏教が浸透している

 ましてやタイの文化に密着している仏教だ。イスラム教徒やキリスト教徒は国民のほんの一部で、ほとんどが仏教徒である。しかも、小学校から仏教に関係した授業などもあるので、日本と違ってほとんどのタイ人が最低限、仏教の知識を持ち、各自に仏教に対する尊厳がある。苦情を出した外国人はその状況を知らず、タイ人を敵に回してしまったのだ。結果的に別の犯罪者が捕まったものの、それはあくまでも偶然で、このトラブルの本質部分には関係がない。
タイ式の葬儀

タイ式の葬儀もちょっとした祭りのようで、とにかく日本とは違い厳かという雰囲気でないのは確かだ

 ただ、この顛末で日本人も学ぶべきことがあるように思える。  警察が動いて身元調査をするまで行くとやり過ぎかもしれないが、伝承してきた文化に自信を持ち、少数の苦情に対しては毅然と突っぱねるくらいしてもいいのではないかと、筆者はタイからそのニュースを見て思うのである。
タイの寺院

タイの寺院では高頻度で祭りが開催される

<取材・文・撮影/高田胤臣>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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