山口県萩市と阿武町にまたがる陸上自衛隊むつみ演習場
防衛官僚が繰り返した「1㎢以上」という選定条件については、花田町長は
「イージス艦の上に(イージス・アショアと同じ)ミサイル迎撃システムが乗っているわけですから、大きな面積である必要はない」と見直しを訴えていた。
しかし今回の防衛省の再調査報告書には、花田氏提案の面積要件除外やイージス艦による代替に関する記載は一切なかった。そこで、囲み取材で筆者は「1㎢の条件がおかしい。狭いイージス艦の中に(イージスシステムが)全部置けるのに、なぜ1㎢も必要なのか。面積要件を緩めれば、もっと(候補地の)選択肢が広がるのではないか」と聞いた。しかし、防衛官僚は
「レーダーとかVLSとか庁舎などが必要」と答えるだけで、納得できる回答えは返ってこなかった。
筆者がこの阿武町長の提案(面積要件緩和による代替案検討)を防衛官僚にぶつけたのには、理由がある。人口約3300人の阿武町はIターンUターン推進や子育て対策などの定住対策を進め、社会的人口減をほぼ食い止めることに成功したモデル自治体だったからだ。イージス・アショア配備は、その流れにストップをかけるのではないかと危惧されている。
しかし7月に岩屋毅防衛大臣(当時)は山口県庁で調査報告書の誤りを謝罪した際、「町の存亡にかかわる」と訴えた花田町長に対して、こんな暴言を吐いた。
「自衛隊の施設が新たにできると、隊員二百数十名、家族を入れると数百名がご当地でお世話になります。町に溶け込み、町づくりに少しでも加勢できるようにしたい」
「自衛隊員移住による人口増で、定住政策へのマイナス要因を埋め合わせることができる」と説明したわけだが、花田氏は
「自衛官が来るから地域振興になるという考えではない」と唖然とした。
防衛官僚は花田氏が提案した「面積要件緩和」をしない理由を語らないまま、従来通りの説明を繰り返すだけだった。
米国兵器を爆買いしている安倍政権は、地方創生のお手本のような阿武町の取組みを否定、代わりにイージス・アショア配備強行による軍事的地域振興を押しつけようとしているのだ。この姿勢は半年近く経った今でも、変わる兆しはない。
<文・写真/横田一>