駅入口のすぐ脇に放置されたメロン色ののぼり
菅原氏がこの場に来ていたのかどうかはわからない。少なくとも、車で走り去って行ったのは秘書だけで、菅原氏の姿はなかった。当然、秘書たち全員が立ち去ったあとで菅原氏が一人で登場して演説をするとも思えない。
取材はこれまでか。
いやそれはそれとして、こののぼりたちはどうするんだ。
鈴木エイト氏が光が丘警察署に電話をかける。
「駅前で、政治家の人も誰もいない状態でのぼりが放置されているんですけれども」
すぐに近くの交番から警察官がやってきた。
事情を全て話して、警察官に尋ねた。
「落とし物」の発見状況を警官に説明する鈴木エイト氏
──路上にこういうものを放置していくって、道交法か何かに引っかかりませんかね。それとも落とし物としてぼくらが拾って警察に届けたら(のぼりを)1割もらえたりしますかね。
警官「いやあ。落とし物と言えるのかどうか。故意に置いて行った可能性もあるんで」
──だったら、ぼくが財布を故意に路上に置いて行ったら、誰かが拾っても拾得物にはならないんですか?
警官「いやあ、だってこれ(のぼりは)、落ちてるんじゃなくて立ててあるんでねえ」
──じゃあぼくが財布を路上に立てて置いて行ったら……
警官「ちょっといま署に連絡して確認しますので」
警察署から菅原氏の事務所に電話しても誰も出なかったらしい。署ではわざわざ警視庁本部にまで問合せて、扱いを確認しているようだった。
警官とやり取りしている途中、通行人の1人が我々に向かって話しかけてきた。
「
横断歩道(の近く)にこういうの置くのは道路交通法違反じゃないの? 菅原一秀にちゃんと言っといて下さいね」
最終的に、「落とし物として処理することになりました」(警官)と告げられた。
この「落とし物」は警察が車で回収しに来るという。我々も警察署に行って、落とし物を拾って届けた者として書類を作ることになった。
菅原氏への取材はできなかったが、自民党ののぼりが警察によって撤去されるという珍事。記者たちは盛り上がった。
記者「1割もらえる!」
警官「現金ではないので1割とかそういう扱いにはならないですね」
記者「え~」
警官「ただ、落とし主が現れずに3カ月経ったら、拾った人のものにすることができます。菅原事務所が落とし主として名乗り出るとは限らない」
全部もらえるかもしれないというのだ(いらないが)。
そこに、先ほど車で立ち去った秘書たちが再び車で乗りつけてきた。
──どうして逃げたんですか?
──どうしてのぼりを置きっぱなしにしたんですか?
秘書たちは完全無視。無言でのぼりを車に積み込み、公設秘書が警察官と少しやり取りをして、また全員が車で走り去っていった。
のぼりを持って足早に立ち去る菅原氏の公設秘書
警察官「ということで、以上です」
記者「お手数おかけしました」
秘書たちがのぼりを放置したまま立ち去ってから約1時間。落とし物が無事、落とし主のところに戻った。実によかった。