野党再編の歴史から考える、立憲民主・枝野代表の「野党共闘」呼びかけの意義

枝野代表の呼びかけは、野党再編の終わりの始まり

 皮肉にも、保守政党を目指した希望の党騒動が、まったく異なる理念の野党第一党、立憲民主党を生みました。立憲民主党は、それまでの野党再編で出現した政党とまったく異なりました。第一に、共産党との連携を排除しない。第二に、保守から革新まで受け入れられるけれども、中道でない明確な政治理念を掲げている。第三に、政党同士の離合集散(ボス間の交渉)に消極的。第四に、労働組合の連合を主たる支持母体としていない(連合を主たる支持母体とするのは国民民主党)。  筆者は、立憲民主党の結党を通じて、枝野議員の「政治的人格」が変わったと見ています。逆境に追い込まれて一人から結党し、それを無数かつ無名の個人が支え、野党第一党まで押し上げられた出来事は、政治家としての「強烈な原体験」になったと考えられます。つまり、結党前の枝野Aと結党後の枝野Bは、政治家としてほぼ別人で、それが立憲民主党の性格に強く反映されているのです。  野党第一党の党首の変身は、野党全体の性格まで変えつつあります。第一期と第二期の野党再編を通じて、宗教団体を母体とする公明党が政権に参画して一般的な信頼を獲得したように、第三期の野党再編を通じて、共産党が一般的な信頼を獲得しつつあります。それは、戦前から続く不毛な「アカ」誹謗の終わりであり、日本政治が国民統合の求心力を発揮する上で不可欠なプロセスです。  そして、立憲民主党を中心とした野党再編は、自公の与党ブロックに対して、立憲・共産の野党ブロックを確立し、30年間の野党再編を終わらせることを意味します。

立憲の理念は、野党ブロックの共通理念

 立憲民主党の理念は、日本国憲法というタテマエの国家方針と、各種政策というホンネの国家方針を一致させることにあります。それが立憲という党名に反映され、保守から革新までを抱合できる理念になっています。故に、野党ブロックの共通理念ともいえます。  各党の政治理念は、次のようにタテマエとホンネの国家方針の組み合わせで、実質的に構成されています。詳しくは、拙稿「安倍政権とは何か?そして何を目指すのか?有権者に突きつけられる選択肢」で解説しています。 A:国家重視というホンネの国家方針に合わせ、タテマエの国家方針の憲法を変更する。 B:引き続き政権のホンネの国家方針と、憲法というタテマエの国家方針を併存させる。 C:個人重視の憲法というタテマエの国家方針に合わせ、政権のホンネの国家方針を変える。  各党の理念は、上記の3つに分けられます。Aは、安倍首相率いる自民党や日本維新の会、小池都知事の率いた希望の党の政治理念です。Bは、かつての民主党・民進党や公明党の政治理念です。Cは、立憲民主党や共産党の政治理念です。  現在の状況はBで、これを徐々にCへと移行させることが立憲民主党の理念で、一定の保守政治家にも受けられるものです。なぜならば、かつての自民党は、Bを中心としつつ、A論者もC論者も含んでいました。だからこそ、国民政党とも呼ばれたわけです。一方、社会党や共産党は、古くからC論者でしたが、それを急進的かつ先鋭的に実現しようとしていました。それが、30年間の野党再編を通じて、漸進的な姿勢に変化してきました。それが、野党ブロックの共闘を可能にしています。  新・民主党や民進党という中道政党の行き詰まりは、Bという国家方針による日本社会の行き詰まりです。人口減少、経済成熟、気候変動などの厳しい課題に対し、対処方針を示せないからです。それらの課題に対する分析については、筆者の『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』(現代書館)をご覧いただければ幸いです。
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国家方針への姿勢が問われる国民民主党議員とチャーターメンバー
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