安倍政権とは何か? そして何を目指すのか? 有権者に突きつけられる選択肢
@TanakaShinsyu)モーメント「安倍政権とはなにか」を再構成したものです。
安倍政権は、自民党の総力戦を主導しています。典型は、経済政策(アベノミクス)です。金融「異次元」緩和による為替・株式市場の活性化(第一の矢)、公共事業費と防衛費の増額を中心とする大規模な財政出動(第二の矢)、社会的規制の緩和と特定分野・企業・研究等の優遇による政策資源の傾斜配分(第三の矢)は、過去の自民党政権による経済政策をあらゆる分野で全力実行するものです。
過去の政策を大規模に再実施する総力戦は、経済政策以外でも展開されています。外交・安全保障では、米国への依存をかつてないまでに強め、特にトランプ政権となってからは、それを一層徹底しています。また、エネルギーでは、福島原発事故を経た後で、気候変動のパリ協定を批准したにもかかわらず、原発と石炭火力を非常に重視しています。
政策だけでなく、政権の体制においても、自民党の総力戦となっています。主要閣僚・党幹部は、自民党の実力者オールスターで占められてきています。例えば、二階俊博氏は、79歳と高齢ながら、二階派首領という党内影響力の強さから、実力派の幹事長として鳴らしています。麻生太郎氏も、77歳の高齢ながら、同様に副総理として政権を支えています。反主流派の実力者・石破茂氏ですら、政権前半は幹事長、閣僚として政権を支えました。
安倍政権は、経産省主導政権です。政権で政策企画の中心を担っているのは霞が関、それも経済産業省だからです。各省庁は、首相・与党への距離を政権ごとに変化させ、あたかも主流派・非主流派と自民党の派閥のような立場になります。首相は、重視する省庁に実力者や腹心を大臣として送り込みます。現在は、筆頭主流派が経産省、第二・三主流派が永久主流派(どの政権においても主流派)の財務省と外務省、第四主流派が防衛省、第五主流派が警察庁であると、見ています。今井首相秘書官に代表されるとおり、経産官僚を政策調整の要(内閣官房・内閣府)のポストに配置しています。
経産省は、安倍首相にとって個人的な関係の強い省です。戦前は商工省として殖産興業を担い、戦時中は軍需省として物資生産を担い、解体を免れて通産省となった戦後は高度成長を担ってきました。安倍首相の祖父・岸信介は、商工省のエリート官僚で「満州国」総務部長(官房長官に相当)を務めた後、戦時中の東条内閣で「国務大臣兼軍需次官」を務めました(軍需大臣は東条首相が兼務)。戦後、岸は公職追放されましたが、軍需省はマッカーサーの来日前に商工省へと看板を戻し、官僚機構は温存されました。
霞が関の官僚には、3タイプ「A:国家第一、B:市民第一、C:自分第一」の人がいます。軍需省は解体を免れ、A官僚が温存され、B官僚とC官僚が戦後増えていきました。しかし、現在の経産省は、主流派のA官僚と従属派のC官僚の集合体で、B官僚は放逐もしくは逼塞しているように見えます。また、A官僚は、経産省だけでなく、各省に存在します。
安倍政権は、国家第一と考えるA官僚にとっても総力戦です。それが、公文書改ざんや隠ぺいに表れています。国家第一の方針を共有する安倍政権を支えるためならば、手段は正当化されるべきとの認識があります。その背景にあるのは、各界エリートが国家を主導すべきとのエリート主義です。
安倍政権は、従来の自民党政権と異なるように見えます。その一つが、不祥事への耐性の強さです。今年に入ってからでも、裁量労働制をめぐるデータの問題、森友学園に関係する公文書の改ざん、加計学園の「首相案件」問題、財務事務次官によるセクハラ、福井沖縄・北方大臣の女性問題など、これまでの自民党政権であれば、内閣の崩壊に至るような問題が続きながら、閣僚の一人すら引責辞任していません。それどころか、内閣支持率は下がりつつも、支持者の中にはさらに熱狂的に支持する動きすら見られます。安倍首相も、憲法改正という大仕事への意欲を保っているように見えます。
はたして、安倍政権とはなにか。従来の自民党政権の特徴や手法と比較するだけでは、見えてこないことが多くあります。そこで、安倍政権の特徴や目標について、解説します。この論考は、政権の肯定や批判が目的でなく、政権への支持・不支持を超えて、政権についての理解を広く共有することを目的としています。筆者としては、政権について「どちらでもない」と考える人の姿勢が、支持もしくは不支持へと明確になれば幸いです。なお、本論考は、ツイッター(
安倍政権は「自民党の総力戦」である
安倍政権は「官僚の総力戦」である
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