最先端[がん治療]、エビデンスがない「新しい治療法」には要注意

怪しい療法を見抜くポイントは?

『保険診療かどうか』は線引きとして理解しやすいので、説明として用いています。3大療法以外でも、『造血幹細胞移植』『オプジーボなどの免疫療法』、それに『がんゲノム医療』の一部は保険診療として認められています。前述の“最先端”については言葉の定義にもよるのですが、『最近、保険適用となった』という意味ならば免疫療法の一種である『CAR -T細胞療法』や放射線治療の一種『陽子線・重粒子線治療』が該当します」(大野氏)  そのような標準医療の領域外にある、いわゆる「補完代替療法」の中での見分け方はどうだろうか。 「まず『抗がん剤は効かない!』などと、標準治療を否定する広告を掲げているものは間違いなく危険です。あとネットで検索して値段を調べてください。同じ療法なのに他よりも明らかに高額なものは危ないとみていいでしょう。加えて『どんなステージのがんにも効く!』というのもダメ。治療でがん細胞が縮小もしくは消滅した患者の割合を示したものを奏効率というのですが、奏効率100%を謳っているのも絶対にダメ。最後に宗教色が強そうだなと思ったらヤメたほうがいいです。本人はわらにもすがる思いで気づかないかもしれないので、周りが教えてあげてください」(福沢氏)  パニックになっている患者を支える、周りの冷静な目が必要だ。

がん治療の未来を明るく照らすものはあるのか!?

 ’18年に医療広告ガイドラインが改正されたことであからさまに怪しい医療は減少しており、今後はさらに淘汰されていくだろう。  最後にがん治療の近未来はどうなっているか、お二方に聞いた。 「患者やその家族が病院で受けている治療に納得して不安や悩みがなければ、そもそも怪しい代替医療をやってみようという考えさえ浮かばないはずです。『がん対策推進基本計画(第3期)』に『患者等とのコミュニケーションの充実など、患者とその家族が痛みやつらさを訴えやすくするための環境整備』などの項目があり、医療者のコミュニケーション技術向上のための取り組みを行っている点に希望を見いだしたい」(大野氏) 「日本が世界をリードしているものとして『光免疫療法』があります。非熱性赤色光を照射することで周りの細胞を傷つけずにピンポイントでがん細胞のみを消せるため、体への負担も少ない療法です。楽天の三木谷さんが、大型スポンサーになっているので、承認は早いでしょう」(福沢氏)  光免疫療法は’21年に国内外で治験が終了し、順調ならば’22年から’23年頃の承認が見込まれている。  がん治療の未来は明るい! 国立がん研究センター

こんな「がん治療」にはご注意!

1.宗教色を感じる独特な治療法 2.「どんながんにも効く」と広告 3.他と比べて値段が高すぎる 4.エビデンス(科学的根拠)が不十分 5.がん3大療法を否定している 【島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授・大野 智氏】 ’98年に島根医科大学を卒業後、研修医を経た後、’02年に金沢大学に日本で初めて新設された補完代替医療講座に赴任。同時にがんの代替医療の科学的検証に関する研究班に参画した 【一般社団法人日本先制臨床医学会理事長・福沢嘉孝氏】 ’84年に愛知医科大学医学部を卒業。’15年に先制・統合医療包括センターを新設。同センターの教授・部長となる。さらに世界中のがん難民や難病難民を救うべく日本先制臨床医学会を設立 <取材・文/上野充昭 撮影/SPA!編集部> ※週刊SPA!12月17日発売号より
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週刊SPA!12/24号(12/17発売)

表紙の人/ 飯豊まりえ

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