現在20代~30代の女性が生まれた1980年代~90年代の人口統計を見るとその異様さが窺える。人口学的には、女児100人に対し、105~107の男児が生まれるのが、自然性比であるのに、
1980年代中盤から男児の出生数が急激に伸び始めるのだ。1990年の出生時の性比は、男児116.5となっており、地方都市に限れば、慶尚北道で130.7、大邱で129.7と異常な数値。ちなみに
第3子以降の出生性比は男児が193.7まで跳ね上がる。
韓国・国立中央医療院の崔アンナセンター長は、「当時の韓国社会では
男児至上思想がはびこっていた。更に超音波検診の導入により、妊娠早期での性判別が可能となり、(夫婦、家族の意思による)
女児に対する堕胎が実施された」と言う。
この当時の
女児選別堕胎が、現在の超低出産の引鉄となった。
韓国で一番出産率の高い30歳、
1988年生まれの人口統計を見ると、1982年85万人の出生数に対し、1988年は63万人と激減。たかが
6年の間に20万人も出生数が減ったことになる。
女児選別堕胎による影響や、子を産み育てる世代の男女間非均等が、韓国が世界で初めて出生数0人台を記録した大きな要因だ。
ちなみにこの男女不均等の出生数は1980年代中盤から2000年まで続く。
韓国もとい朝鮮半島は古くから儒教の影響を大きく受けた国家である。
儒教に根差す男性優位主義は、数百年ものあいだに社会に浸透し続けた。日本に比べ、韓国社会のジェンダー論争やフェミニズム思想が活発化されるのは、根深い男尊女卑思想の裏返しでもある。
現在、韓国の人口は約5000万人。これが
80年後の2100年には1800万人まで減少するとのデータもある。
果たして、これは対岸の火事なのか。
<取材・文/安達夕>