24時間365日営業を強いられては普通に生活することもできない。コンビニ元旦休業に向けたオーナーの悲痛の訴え

本部社員の無断発注などから見える「体質」

 次にユニオンの副委員長を務めるセブン‐イレブン前橋荻窪町店の永尾潤さんからの発言があった。永尾副委員長は今回の年末年始ストでは12月30日から1月3日まで店を閉めるつもりでいるが、本部からは認められず、コンビニ経営により借金を抱えているという事情もあり、実際に数日間に及ぶストライキを行うかどうかはまだ思案中だという。  永尾副委員長は2009年にセブン‐イレブン・ジャパンが見切り販売の制限に関して公取委から排除措置命令を受けた時から本部と闘ってきたオーナーの一人であり、今回の会見でもかなり古い資料を交えながら本部の不正を告発した。永尾副委員長の発言のうちで特に重要だと思われるのは、「おでん無断発注」を結果として生み出した原因であるセブン本部の闇が暴露された点である。本部が事前にメーカーとの間で仕入数量を指定して契約を結び、そうして仕入れた商品をオーナーに押し付ける形になっている問題については第二次集団申告の記事でも言及したが、今回の会見ではより一層深い問題提起が行われた。  オーナーがOFC(店舗経営相談員)の役職にある本部社員におでんを無断発注されるという個別的・局所的な問題の背景には、セブン‐イレブンという会社の腐敗した体質が全体的な問題として存在している。本部がメーカーとの間に契約を結んで仕入れてきた商品をとても売りさばけないほど大量に押し付けられ、断れば契約を解除すると脅される。この点でオーナーが被害者であることは上掲の記事で書いたが、今回の永尾委員長の発言は本部社員の側が抱える問題、つまり何故無断発注をしてしまうのかという事情に迫っていた。 「OFCはオーナーに発注させることができないとFC会議で立たされてしまう。結果、発注の強制、無断発注が起こってしまうということになります。まず数量契約ありきになっていて、それをOFC個人のノルマとして押し付けてくるんです」

永尾副委員長が語る、鈴木敏文の「魔女狩り経営」

 永尾副委員長はイトーヨーカ堂で働いていたこともあり、創業以来数十年にわたってセブンの経営を主導し続けた鈴木敏文氏のもとで三十年以上前からこうした事態が横行していたことを指摘した。 「これは三十数年前のイトーヨーカ堂の時からやってました。今から30年くらい前、日糧製パンのチーズ蒸しパンが流行った時、イトーヨーカ堂の店長会議で売っていない店が立たされて、うちの店は売っていたから立たされずに済んだ。当時のイトーヨーカ堂の店長は泣きながら『立たされずに済んだ、ありがとう』と俺に言っていました。そういうことをずっと鈴木敏文さんは続けてきた。俺はこれを魔女狩り経営と言うんですけど、本部のやり方に従わないOFCは魔女狩りのように断罪される。だからオーナーに押しつけちまえということになるんです」  本部社員による無断発注も、数量契約ありきでノルマを押し付けられ、そうした圧力のもとでやむを得ず選択するしかない手段と化してしまっているのだ。これを本部社員個人の人格の問題と見なし、すべての責任をそこに帰してしまうのは明らかに間違いである。「おでん無断発注」については、やられるオーナーもたまったものではないのは言うまでもないことだが、本部社員もこのようなハラスメントを受けた結果そうした行動に走ってしまうという点でまた別種の被害者だといえる。末端の社員ではなく、それを指導した上層部の責任が問われるべきなのだ。  この問題については、被害者どうしが殴り合う地獄のような状況が出現してしまっている。だがこうした状況を打ち破っていくためにこそ労働組合がある。河野委員長は筆者に対して「組合員のオーナーと話していると未だに本部のクソ社員め、などと言われます。もちろんこれは冗談として言うんですが」と話した。コンビニ関連労働者のあいだでもオーナーや本部社員といった地位・待遇の差はあり、組合に入ったからといってそうした条件がなくなるわけではない。しかし、コンビニ関連ユニオンはそのような分断を団結によって乗り越えていくことを目標として掲げている。そしてそうした形の団結はユニオンのなかで現に芽生えてきている。
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ローソン、ミニストップのオーナーも本部の実態を暴露
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