契約内容の見直しを拒絶、詐欺まがいの無断発注…… オーナーらがセブン‐イレブン・ジャパンを再び集団申告

公取委への第二次集団申告

オーナーらが公取委に集団申告 10月10日、セブン&アイがグループ全体での約4000人の人員削減、セブン‐イレブンの不採算店1000店の閉鎖・移転などを内容とする大リストラ計画を発表し衝撃を与えた。しかし、グループの上層部によるトップダウンの改革ではなく、コンビニ関連労働者の働きかけによって労働者自身の待遇改善を目指している労働組合がある。それがコンビニ関連ユニオンだ。  10月11日、コンビニ関連ユニオンの呼びかけによって集まったオーナーらが東京・霞ヶ関の公正取引委員会を訪れ、先月の11日に引き続き第二次集団申告を行った。 【前回の申告の詳細はこちらの記事を参照】⇒セブン-イレブン・ジャパンは「独占禁止法に違反」。オーナーらの主張を解説  今回もオーナーらが独占禁止法に違反していると主張した筆頭はセブン‐イレブン・ジャパンだ。  同日の申告直前に開かれた記者会見の内容によると、第二次集団申告で主に問題とされたのは、まず「契約書に明記された5ヶ年ごとの契約内容の見直しが40年間で一度も行われていないことが優越的地位の濫用に当たる」ということだ。さらに「前回の集団申告で問題になった社員によるおでん等の無断発注は、本部とメーカーとの間の契約をフランチャイズ加盟店に押しつける形で行われている組織的問題である」ということも問題とされた。以下これらの内容を中心に解説する。

40年間無視され続ける「5ヶ年ごとの契約内容の見直し」

 セブン‐イレブン・ジャパンがオーナーとの間に取り結んだ契約内容がまとめられた「加盟店基本契約書」の第58条では、契約内容が定められた1979年10月1日から5ヶ年が経過するごとに、セブン本部はオーナーの意見を聞いた上で契約に記載された基準値を見直すと定められている。基準値とはチャージ料(店舗売上の中から本部へ支払う手数料)の比率等の値であり、オーナーの店舗経営を何にもまして左右する重大な意味をもっている。  しかし、この契約内容の見直しはなんと79年から40年間が経過した今現在に至るまで一度も行われていない。今年はその5ヶ年ごとの節目にあたるため、9月11日の集団申告の後、コンビニ関連ユニオンの河野正史委員長は東京・四ツ谷のセブン本社に赴き、オーナーの意見を聞いた上で契約内容の見直しを行うように求める要求書を社員に提出した。  要求書によると、コンビニの店舗数は、1983年度には6308店舗だったが、2018年3月末には5万7956店となっている。35年間で9倍以上に増えているのだ。また東京都の最低賃金は、382円(1979年)から、985円(2018年)まで上昇している。  基本契約書は、「社会・経済情勢の急激な変動」も契約を見直す理由になるとしている。コンビニオーナーを取り巻く環境がこれだけ変化しているのだから、セブン本社は契約の見直しに応じるべきだろう。  また、セブンイレブン前橋荻窪町店のオーナーである、永尾潤同ユニオン副委員長は、今年8月に内容証明書を送付。こうした情勢の変化を考慮すれば現在はチャージ率を9%減額する基準値の変更が本部とオーナーの「労使関係」の正常化のために必要だと主張している。  だがセブン本部は9月20日に要求書を河野委員長宛てにそのまま送り返してきた。要求書では10月10日までにオーナー全員との集団交渉の日時と場所を指定するよう本部に求めていたが、これに対する回答はなかった。  契約書の第57条では、契約内容を5ヶ年ごとに見直すことを定めた第58条を含めた各条項の定めに違反した場合、違約者は損害賠償をしなければならないと定められている。セブン本部は5ヶ年ごとに契約内容を見直すという契約に違反しているばかりか、それによってオーナーに対しての損害賠償を求められることにもなりかねない。

オーナーの意見を聞いて契約内容を変えてきたというセブンの主張に妥当性はあるのか?

 この異常事態を前にして本部も徹頭徹尾沈黙し続けているわけではなく、あるオーナーは社員から次のような見解を聞かされたと会見で語った。その社員によれば、セブン‐イレブン・ジャパンが公取委から排除措置命令を受けた2009年から実施されている食品廃棄ロス15%の本部側負担や、2017年9月から実施されているチャージ率の1%特別減額など、本部はオーナーの意見を聴いた上で契約内容の改定を行っているという。  そして聴き取りについては普段から社員がフランチャイズ店舗を訪店して行っており、要求書に対する文書による回答はしないとも述べていたという。これらはすべて永松文彦社長の見解として受け取って構わないとのことだ。  これに対してコンビニ関連ユニオンは19年10月11日付で声明を発表した。9月に同ユニオンが提出した要求書はあくまでも基本契約書第58条に定められている5ヶ年ごとの契約見直しを行うように要求したものであり、本部の見解はこれに対して正面から回答していない。本部が第58条(および第57条)に違反しているのは依然として変わらない。これが本部に対する同ユニオンの見解だ。  また声明では基本契約書で「契約は文書で行う」と定められていることが指摘され、文書回答をしないというのは今後契約の見直しを行わないと言っているのと変わらないと本部を弾劾している。  会見に来ていたあるオーナーは、「本部社員の日常的な訪店による聴き取りといっても、そこで意見を聴き入れて実現されたことなど一度もない」と語った。加盟店が本部に対して意見を提出することのできる「改善提案書」をオーナーが提出しようとした場合も、OFC(店舗経営相談員。最もオーナーに近い立場にいる社員)から「出すのはやめてくれ」と止められてしまうという。  オーナーらが求めている契約改定の要求は基本契約書に明記されている立派な契約内容であるにもかかわらず、これを遂行しないことによってセブン‐イレブン側が契約関係で優越的な地位にある以上、セブン本部は優越的地位の濫用に該当している。これが同ユニオンの見解だ。
次のページ 
なぜ社員がオーナに無断で勝手に発注する事態が起きるのか?
1
2