展示会場の横にはジェンダー、フェミニズム、女性の性に関わる本やポストカード、スティッカー等が売られているショップがあった。ちなみにポストカードの中には女性器をモチーフにした春画のカードも売られていた。
店内の壁には「今月のアーティスト」という題名で、英国在住のイラストレーター、
シャーロット・ウィルコス氏のヴァギナをテーマにした絵画が飾られていた。
2018年にアメリカのポップシンガー、
ジャネール・モネイが「Pink」という曲のミュージックビデオの中で女性器を模したコスチュームが話題になったり、2019年のニューヨークのファッションの祭典でラッパー、
カーディ・Bが女性器を模したドレスで登壇し、これもまた話題になったり、とヴァギナがキュートでポップな表象される機会が増えた。
今まで男性主観のポルノ的な文脈以外で語られてこなかった女性器、女性の体についてこのように目に見える形で表象され、女性が自らの性を語ることの大切さが強調されてきている。
同伴したドイツ人、イラン人女性二人とその後話をした。
「今回のこの展示は教育的で、少しベーシックな印象を受けたが、このように
女性の性について語る場所が目に見える形であるということに意義があると思う」
「初等教育の性教育の場でこういう話をきちんと聞きたかった。
自分の身体のことなのに未知の部分が多いのは良くないことだと思う」
という意見が出てきた。やはり国をまたいで性教育の大切さは強調されるべきだ。
性のこと、特に性器の話になるとどうしてもポルノ的視点、タブーの意識、「いやらしい」という感覚が付随してきがちだが、本質的なところを考えると、
自分自身の身体についての知識は最低限身につけておくべきだと強く思う。
性や性欲は多くの人が共通として持つものであり、よこしまな考え抜きに性をオープンに語らないと、性病や望まれない妊娠など、様々な不幸の温床になるだろう。
このヴァギナ・ミュージアムでは展示の他、トークイベントやセミナー等の開催も予定されており、公の場所で性を語る機会を奨励している。今後の発展がとても楽しみな場所である。
日本でもこのような場所が生まれることを強く願う。何度も言うが、
性教育の話は国をまたいで共通の課題である。女性がオープンに性を語る大切さをここで強調しておきたい。
【参考文献】
Spettel,S and White, M (2011) The Portrayal of J. Marion Sims’ Controversial Surgical Legacy, the Division of Urology, Department of Surgery, Albany Medical College, Albany, New York
<取材・文/小高麻衣子>
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院人類学・社会学PhD在籍。ジェンダー・メディアという視点からポルノ・スタディーズを推進し、女性の性のあり方について考える若手研究者。