バンコクではタイ企業のレンタカー会社、欧米企業のほか、日系も存在する。日本のように時間単位あるいは1日単位で料金計算することもあれば、運転手付きというサービスもある。後者を厳密にレンタカーというかどうかは別にしても、多くのレンタカー会社が運転手付きも用意している。
運転手付きであれば観光客でも手軽に利用できると思うかもしれないが、諸刃の剣で必ずしもメリットばかりとは限らない。というのは、先にも述べたように、タイ人の交通マナーが非常に悪いため、運転手のスキルや一般常識が著しく欠けていることがよくあるのだ。
タイでは運転手という職業の社会的地位は低い。そのため、ちゃんと学校を出ていなかったり、ほかの仕事には就けなかった人が働いていることも少なくない。バスや長距離バン(小型の長距離バスのようなもの)などを地方の幹線道路で見ると、スピード超過は当たり前で、見通しの悪いカーブで追い抜きをかけるなど、非常に危ない運転をする。実際にバスなどの大事故は年に何度も発生する。
運転手の危険運転で発生する長距離バスの事故はタイでは頻発している
こういうときに運転手が生き残ることが多々あり、現場から逃走してしまう。これにはふたつの説がある。ひとつは自分が起こした事故にパニックを起こして逃げ出すというもの。もうひとつは、法律の解釈では現行犯逮捕より、一度逃走してでものちに自首した方が減刑の事由になるからだという。後者はあくまでも噂の範疇なのだが。
いずれにしても、運転中に乗客の命を守るという自覚は彼らにない。日系のある大企業では工場勤務の駐在員のために運転手を何人も雇っていたが、ある日曜日に社内ゴルフコンペがあり、駐車場で待機中に運転手たちは酒盛りをしたという。その帰り、1台の運転手が居眠りをし、ノーブレーキで立ち木に激突し、日本人駐在員は全治数ヶ月の重傷だった。日系とはいえ、タイに進出して数十年のため、細かなオペレーションはタイ人任せだったこともあるだろう。後日、運転手たちは全員解雇になった。
筆者はタイ人の妻を持ち、子どももタイの学校に通わせている。私立校ではあるものの、
スクールバス運転手の道路逆走や追突事故が相次いでいて、とても任せられるものではなく、自分たちで送り迎えをしている。極端な話、
タイの自動車保険は対人よりも対物の方が最大支払額が大きいくらいなので、命が安いという怖さがあるのだ。
とはいっても、運転手付きレンタカーはタイに慣れていない人には大きなメリットだ。好きなところに行けるし、気になった場所で停めてもらって見学ができる。商業施設や観光地は駐車場そのものが混雑していることもあるが、運転手付きなら入り口に送り迎えしてもらって、時間短縮にも繋がる。
では、運転手付きレンタカーを安全に借りる方法はないのだろうか。