パチスロ大手サミーが打ち出した「競技」としてのパチスロ「P-SPORTS」の大会は業界の未来を拓くか?

「ディスクアップ」という稀有なパチスロ機

 サミー傘下の銀座が製造し、サミーが販売した「パチスロディスクアップ」というパチスロ機がホールデビューをしたのは2018年の6月。栄枯盛衰が激しいパチスロ市場において、設置から1年半が経過した今でも大きな人気を誇っており、全国で5000店以上ものホールで現役稼働中だ。  このディスクアップの人気の秘密は、2000年に発売された4号機時代の初代ディスクアップの系譜となる圧倒的な技術介入性にある。パチスロにおいて、狙った図柄をピッタリ揃える「目押し」という技術が、他機種とは比べ物にならないほど要求される。しかしこの「目押し」技術を駆使すれば、低設定の機種においても、出玉率が100%をゆうに超えるとも言われている。  全国のパチスロファンはこの点に注目し、我先にディスクアップの「目押し」技術を習得しようと押し寄せた。パチンコホールにとっては、高い目押し技術を保有する客が来れば、利益が全く生まれないと知りながらも、その人気と集客力の高さを無視することは出来なかった。当初は未導入であったホールも、中古市場に出回るディスクアップを買って設置したし、ディスクアップの増大をアピールするホールも多く現れた。 「設定1でも勝てるパチスロ」というのが、ディスクアッパー(ディスクアップのコアファン)の中の共通認識である。(筆者も何度かこのディスクアップの目押しに挑戦してみたが、その難易度はとても高く、攻略する事は出来なかった…)  SNS上では、ディスクアップの愛好者たちが集い、「ディスクアップ選手権」と冠し、事前に告知された日に、全国のホールでディスクアップを打ち出玉を競うという催しも実施された。  まさにディスクアップとは、これまでのパチンコ業界の常識を覆し、独自のカルチャーを生み出した稀有な「名機」だと言えるだろう。

パチスロは「競技」として再定義されるのか?

 結論から言えば、至極困難であると思う。  筆者は、パチンコ・パチスロは一般的なギャンブルとは一線を画すると考えているが、それでもギャンブル的な要素が強い遊技であるし、その点が、社会的な批判を受けながらも長らくパチンコ業界を支えてきた根幹であると思っているし、今更「競技」という綺麗事を言っても共感をしてくれる人は極めて少ないと思っている。  しかし、今回のサミーの「超ディスクアッパー選手権」におけるチャレンジ精神には注目したい。  高額な賞金もそうであるが、サミーは今回のイベントに際して、競技用のディスクアップも用意している。何かを変えなければ、斜陽産業と呼ばれて久しいパチンコ業界の衰退は止まらないというリーディングカンパニーの危機感が十分に窺える。  この「超ディスクアッパー選手権」は、東京と大阪のサミー支店において予選が開催され、来年2月22日にサミー社と、パチスロメーカー大手のユニバーサル社が共同に開催する「ユニバカ×サミフェス2020」の会場で実施されるという。  思い返せば、パチンコのくぎ師と言われる人たちが、某テレビ局の特番でその技術を競った牧歌的な時代もあった。最近のパチンコ・パチスロ番組も、演者たちが出玉を競ったりはするが、あくまで「運ゲー」の要素が強い。そのような中、「技術介入」という要素に特化した今回のイベントが、パチスロ機の未来に投げかける問題提起は決して小さくは無い。 <文/安達夕>
Twitter:@yuu_adachi
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