マンガ・榎本まみ
弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々」<39>
「結婚前から違和感がありました」
私の事務所に相談に来た50代の女性が言った。しかし、夫は基本的に優しい人だったので、違和感を無視して、結婚したという。ところが結婚後、夫は横暴になった。
夫の食事は、出す順番が決まっていた。
まず、みそ汁、次に副菜、そして主菜、最後にご飯。順番が違ったり、次に出すものが遅かったり、冷えていたりすると、夫は激怒した。
女性は、夫が食べている間、テーブルの近くに待機し、夫の食事を見ながら、次の行動に待機するようになった。女性は約30年間、彼専属のウェイトレスだった。
そんなある日、大学生の娘が突然「お父さん、モラ夫だよね」と言った。女性は、初めて聞く言葉に意味がわからなかったが、娘の言うままに、いろいろと読んだ。そのどれにも「夫のこと」が書いてあり、驚きの連続だった。世の中には「モラ夫」と呼ばれる男性が多数おり、夫もその一人であるとわかった。
「私の心の中の違和感に言葉が与えられ、まるで霧が晴れたかのようでした」と女性は言った。
まるで未就学男児=「俺をモラ夫と言うお前がモラ妻」
一般に、モラ夫は、妻を従者として扱いながら、俺は「妻によくしてやっている」と自己評価する。
妻が不満を述べ、夫のモラを指摘すると、「俺をモラ言うお前がモラ妻」がモラ夫定番の反論だ。すなわち、多くのモラ夫は
、「バカって言うお前がバカ」と言い返す未就学男児のレベルなのだ。
そして、少なくないモラ夫が、「よくしてやっているのに、妻が反抗するのは、男ができたに違いない」と本気で思い込んだりする。ある中年のモラ夫は、妻が別居を希望したことに不審を抱き、パート先の社長との不貞を疑い、職場に怒鳴り込んだ。
妻が家を出て行っても、モラ夫たちは、自分を省みることはない。残されたモラ夫たちは、不貞を疑い、或いは、「実家や弁護士に唆された」「精神が不安定で自分のしていることがわかっていない」などと言い出す。