家計を制限し、生活費を出し渋るモラ夫の経済的モラ行為が妻を追い詰める<モラ夫バスターな日々38>

お前の金は俺のカネ

<漫画/榎本まみ>

弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<38>

 離婚調停にて夫は、 「生活費は十分に渡していた。妻の借金なんて知らない」 と述べた。  妻によると、同居生活中、渡された生活費は1日あたり1000円だった。家賃、水光熱費は、夫の口座からの引き落としだったが、それ以外の生活費は全て込み込みだ。  他方、夫の年収は、1000万円を超えている

妻に生活費を渡さず、家計を制限するモラ夫

 モラ夫は、妻に渡すカネを厳しく制限する。1日当たりの生活費×日数で月額を計算し、その金額を渡す事例が多い。私の実務経験上、日額は1000円が一番多く、1500円がそれに次ぐ。子どもができても、容易に増額を認めない。  妻が足りないと訴えると、「できないはずはない」、「浪費している」と妻を非難する。お金の話をするとあからさまに不機嫌になったり、ガン無視したりして、妻をけん制する夫や、買ってきたものを点検し、「本当に必要なのか」「価格を比較検討したのか」と妻を責め立てる夫もいる。  そのうちに、妻に家計を任せられないなどと言い出し、領収書やレシートと引き換えに現金を渡す方法に変えるモラ夫もいる。  これが繰り返されると、妻は、夫が不機嫌にならないように、自ら生活費を補填するようになる。独身時代の預金の取り崩しや、実家からの援助などに頼る例が多い。  子どもが保育園・幼稚園に通い出すと、近所のパートに出る妻もいる。しかし、モラ夫は手を緩めない。パート収入の分、渡す家計費を減額したりする。多くのモラ夫は、減額して浮いたお金を自分の趣味や遊びにつぎ込む。結局、働いても家計は楽にならない。

「お前が欲しくて産んだんだろ」と子どもへの出費も渋る

 そしてモラ夫は、屁理屈をこねて、妻の負担を増やしていく。例えば、「子どもはお前が欲しくて産んだんだから、子どもに関する出費はお前の負担だ」などと、まるで妻が一人で子を作ったかのようなことを言う。その結果、パートに出ることによって、却って家計が苦しくなったりする。  ここまで来ていると、夫のモラは相当進んでいるはずだ。モラによる、妻のダメージも、心身を蝕む程、累積していることも多い。  冒頭の妻は、夫からディスられ続け、うつ症状が進行し、働けなくなった。しかし、夫は、家計費を元には戻さない。妻はやむを得ず、消費者金融からお金を借り、家計の不足を補ってきた。うつ症状が進み、心も荒み、部屋が散らかり出した。  その結果、夫のモラは更にひどくなり、とうとう「お前は役に立たない女だ」「出て行け」と怒鳴るようになった。  妻は、死んでしまいたいと考えるようになり、心療内科を受診した。そして、医師から、別居、離婚を勧められた。  離婚調停にて、消費者金融からの借金について、夫にも負担を求めたところ、夫は冒頭のとおり、「妻の借金は知らない」と述べ、「(妻の)浪費だ」と決めつけた。
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被害が募れば募るほど却って妻は被害を認めなくなってしまう理由は?
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