家計を制限し、生活費を出し渋るモラ夫の経済的モラ行為が妻を追い詰める<モラ夫バスターな日々38>

モラ被害を受ければ受けるほど生じる、パラドックス

 夫が、家計費を厳しく制限し、日常的に妻を「指導」したり、不満や非難を繰り返していれば、彼は、押しも押されぬモラ夫である。しかし、少なくない数の被害妻は、夫がモラ夫であること、自らが被害妻であることを認めない。私は、モラ被害妻の相談の実務経験から、モラ被害にはパラドックスがあると思っている。  すなわち、モラ被害を受け続けると却って、その被害を認めない傾向が生じるのである。  整理すると、以下のようになる。 1、モラ被害が深刻なほど被害者は自責の念を強め、モラに気付き難い。 2、モラ被害が長いほど被害者の洗脳が進み、自らの心身の異常を軽視する。 3、モラによる精神破壊が進むほど被害者は、まだ頑張れると考える。 4、モラ度が高いほどモラ夫は、妻にはよくしてやってると主張する。  もしも、あなたが、 ① 私にも悪いところがあるから夫が怒る ②いつ夫に怒られるかビクビクしているが、心療内科へ行くほどではない ③ 子どものためにもまだまだこの結婚を維持し頑張れる  などと考えているとしたら、モラ被害はすでに深刻で、あなたの心身にたまったダメージは相当なものである可能性が高い。

被害妻にありがちな「揺り戻し」

 モラ被害を放置すると、心身が壊れていき、さまざまな疾患にかかる。若年性更年期障害になったり、うつ症状がひどくなったりすることもある。  そして、洗脳から一歩抜け出しても多くの場合、揺り戻しがある。次のような疑問が妻の心に浮かぶのである。 ①おかしいのは私? ②(夫のモラについて)これくらい、普通のこと? ③私の我慢が足りない? ④(別居、離婚は)子どもを不幸にする? ⑤(夫の言動は)本当は、モラハラなんかではない? ⑥(夫の言うように)モラハラはむしろ私?  以上のような「揺り戻し」は、むしろ被害妻の証拠である。被害妻はモラ夫によって自責の傾向を強められているので、洗脳から抜け出し始めても、油断すると、自責の念に囚われてしまうのである。  長期間、自責の念を持ち続けると、心身を壊す危険がある。  心身が壊れる前に、被害妻側に立つ専門家に相談したほうがよい。 <文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。コロナによる意識の変化を活動に取り込み、リモート相談、リモート交渉等を積極的に展開している。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
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