そして、妻の代理人として連絡してきた弁護士に対して、
・妻が出て行く理由として思い当たることはない
・(自分が)妻と直接話せば、(円満に)解決する
・妻が離婚を希望していると思えない
・離婚言ってるなら頭がおかしいに違いない
などと真顔で言ったりする。
このように言い立てるモラ夫は、離婚に反対する。離婚に反対したと聞いて、多くの妻は、「えッ!!、『離婚するぞ! 出て行け!』って何度も怒鳴ったんですよ」と驚く。
私が、「モラ夫の『離婚するぞ!』は単なる脅しで、本気ではありません」と言っても、妻の驚きは収まらない。ある妻は、「『お前には一円もやらない』も脅しですか?」と訊いた。私が「
いや、それは本気ですね」と言うと、さらに納得できない顔をした。
冒頭の女性のケースは、その後、離婚調停になった。
調停でモラ夫は、「離婚の理由は、全く思い当たらない」と言い張った。妻は、「(離婚理由は、夫の)モラハラです」と説明したが、調停委員は全く納得しない。委員は原則、年配者であり、また、ある程度社会的な地位にあった者が多いので、保守的であり、モラ文化側にいる(つまり、モラ委員)ことが多いのだ。
そして委員は、妻に対して「離婚理由を書面にまとめてくるように」と指示した。
因みにこのパターンでは、書面を作成、提出しても、モラ夫の嘘満載の反論書面を引き出すだけで、労力に見合った進展は望めない。
多くの事例では、婚姻費用の話合いを先行させ、
月々払わせるのが一番効果的だ。モラ夫の殆どはとてもケチなので、
婚姻費用を支払わせると早期にギブアップして、離婚に応じる可能性が高まる。
万一、離婚調停が不成立でも、離婚裁判に進めば、いずれ離婚が成立する。つまり、離婚の成立は時間の問題である。
それでも、モラ夫との離婚に踏み出すか迷っている方も少なくない。そんなとき、私がよくする質問がある。
・10年後、20年後も彼と一緒で幸せですか。
・同じお墓に入って、永遠に彼の妻でい続けたいと思いますか。
もしも、いずれかの問いへの答えに戸惑いがあれば、一度、離婚を真剣に検討したほうが良い。
<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>