「聞き上手」な人は何が違うのか? 表情を察し、表情で伝えることで変わるコミュニケーション

聞き上手

イラスト/いらすとや

清水建二の微表情学第92回

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。みなさんの周りに「この人、聞き上手だな」「この人に話を聞いてもらいたいな」「相談するなら、この人!」という方はいらっしゃいますか。あるいは、「自分がよく相談される人です」という方もいるかも知れません。こうした方々はどんなスキルを持っているのでしょうか。聞くプロである心理療法のセラピストから学びます。  心理療法中のセラピストとクライアントとの相互のやり取りを記録・分析した研究によると、クライアントの見せる表情の変化にセラピストが適切に対応できるとき、クライエントは自分のわだかまりを解消できるキッカケをつかむということがわかっています。

情緒的な関係が成り立つ聞き方

 具体的なプロセスは次の通りです。  最初、クライアントはセラピストから顔を背けながらネガティブな出来事を話します。クライアントはセラピストの様子をさりげなく見ながら、一瞬だけ微笑んだり、声を出してわらったりしながら、顔をセラピストの方へ向けます。こうした変化に対し、セラピストは瞬きをしたあと、悲しみと幸福の混ざり合った表情を見せます。ときに声を出して笑い返すこともあります。その後、セラピストは具体的な言葉を紡ぎだしていきます。このようなプロセスが生じるとき、両者の間には情緒的な関係が成立し、セッションが上手くいくことがわかっています。  一方で、このようなクライアントの変化にセラピストが先のような表情反応をせず、いきなり話を始めると、情緒的な関係が成立せず、セッションが上手く行かないことがわかっています。  両者のセッションにおいて、クライアントとセラピストの心の中で何が起きているのでしょうか。  ネガティブな話をするクライアントは、恥・罪悪感・落胆・悲しさ等ゆえに顔を背けていると考えられます。そして、セラピストがどんな様子で話を聞いているか、自分の話を受け入れてくれているかを確かめるべく、セラピストの様子を垣間見るのだと考えられます。笑顔の理由は惨めさからくることもあるでしょうし、クライアントが気を使い、ネガティブな空気を和らげるためになされることも考えられます。
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相手の表情だけでなく、自分の表情も大事
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