「空室が害虫の温床」「ペットの臭気が近隣にまで漂う」……管理がずさんな物件に仰天

きちんと管理されていない物件のせいでエリア自体が敬遠される

 管理の状態と住環境の悪化はセットで訪れる。こうなると当然ながら入居希望者は次第に減少する。所有者は定期的に管理会社と連携を取り、現状の確認をする必要がある。もし仕事ぶりに不満があれば、管理会社を変えるのも手だ。  しかし空室が目立ち所有者の収益が下がると、管理に気を配れなくなる。こうなると管理がずさんになり、さらに空室が生じてキャッシュフローが悪化するという負のサイクルに陥ってしまう。  悪影響は、所有者や当該物件だけにとどまらない。入居者のゴミ捨てマナーが悪く、指定した場所に捨てない、回収日を守らないといった行動が繰り返されれば、近隣からのクレームの原因になる。特に夏はごみが腐敗して悪臭を発して不快になるおそれがあり、衛生面での懸念もある。 「地域に一棟でもそのような建物があると、エリアの人気が下がって住みたいと思う人が減ってしまうおそれがあります。管理が行き届かない物件は空き巣に入られるリスクもあり、防犯面でも心配ですからね。近隣の物件を所有する方からすれば空室リスクを抱えるわけですから、迷惑でしかありません」  たとえば凶悪犯罪が起こったとする。もし自分が部屋を借りようとするなら、そのエリアを真っ先に選ぶだろうか。直接的な影響がなかったとしても、避けてしまう。同じことが発生するわけだ。  安孫子氏は不動産会社に勤務時代、近隣にきちんと管理されていない物件があったせいで、入居者が集まらなかったケースを経験してきた。管理をしっかりしている所有者が気の毒だ。  また自転車やバイクを指定駐輪スペース以外の場所にとめてしまい、周辺住民の通行の妨げになるケースもある。

入居者がペット飼育のルールを守らないことも

 不動産業界で10年以上のキャリアを持つ安孫子氏は、ずさんな管理の物件を多く目にしてきた。その中でも印象に残った物件について聞いてみた。 「ペット可物件だったのですが、飼育について細かな規則について入居者への説明が悪かったのでしょうね、ルールがまったく守られていませんでした。特にひどかったのは、臭いでした。物件の外からでもわかるほどの悪臭が漂っていました」  この物件の入居者は賃料の滞納を繰り返す人物で、契約を解除したという。多くの物件では建物の損傷を懸念してペットの飼育をNGとしている。しかし「ペットと一緒に暮らしたい」との要望を満たすべく、ペットの飼育を許可する物件も存在する。しかし、飼育できる動物の数を制限するといった規則が設けられており、住人が遵守しない場合にはトラブルになる。 「ほかには、管理会社がほとんど巡回せずほったらかしにしていた物件も衝撃的でした。空室が目立っていたのですが、うち一室に入ったところ害虫がたくさん発生していて、その光景に唖然としました」  このケースでは所有者と管理会社が話し合い、リフォームを行って以後の管理徹底に務めた。その結果、住民マナーは徐々に良くなり、空室も解消していったという。  しっかりと巡回やマナー向上への呼びかけをしておけば、ここまで状況を悪化させずにすんだはずだ。日頃の大雑把かつ無責任な対応がトラブルを生み出してしまったと言える。 <取材・文/薗部雄一 取材協力/安孫子友紀>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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