「空室が害虫の温床」「ペットの臭気が近隣にまで漂う」……管理がずさんな物件に仰天

不適切な管理は荒廃を招く

不適切な管理は荒廃を招く(写真はイメージです) S_Umezu/Pixta

 建物の周りにはゴミが散らばり、部屋からは大音量の音楽がダダ漏れ。おまけに、入居者の所有物が公道にはみ出す形で置かれており、通行人の邪魔になっている。これらは、賃貸物件で実際に起こったケースだ。  本来なら建物は常に清掃され、各部屋や共用部分の設備点検が行われたり、入居者からのクレームに迅速な対応をしたりして快適な住環境を提供するのが好ましい。  しかし中には冒頭で紹介したように管理がずさん、もしくはほとんどされていないことがある。こうなると入居者の不満は募り、不潔さや住人マナーの悪化により近隣とトラブルになることもある。  物件の管理はなぜずさんになるのか。それによって、近隣住民にはどんな悪影響があるのか。不動産会社「縁合同会社」代表の安孫子友紀氏に話を聞いた。

物件の管理には、自主管理と委託管理の2種類がある

 本題に入る前に、管理のやり方について説明しよう。  物件の管理は、所有者が行う「自主管理」と、管理会社に業務を委託する「委託管理」の二つのやり方がある。大規模マンションでは委託管理が通常だが、戸数の少ない小規模な物件では自主管理をすることがある。また、単一物件の所有であれば自主管理を行うことも少なくない。  委託管理は管理会社に代金を払って管理を一任するため、所有者の負担は軽減する。自主管理と違って手数料を払うため収益は減るものの、物件をしっかりと管理してもらえることのメリットは大きい。  たとえば、適切な清掃をすることで清潔さを保てるほか、声がけや掲示板での注意喚起によって住人のマナー向上が期待できる。誰かが平然とルール違反をしてとがめられなければ、「自分も大丈夫だろう」と思う人が続出し、風紀が乱れてしまいかねない。所有者だけでは目が行き届かない部分もフォローしてもらえる。  部屋を借りる立場からすれば、そのような物件は安心できる。そのため人気が高くなり、退去者が出てもすぐに次の入居者が決まる。所有者からすれば賃料収入が途絶えにくいため、安定した不動産経営につながる。

定期的な巡回をせず、現状の把握がされていない

 様々な方法で行われる物件の管理だが、時にずさんになってしまうことがある。それはなぜなのか。まず挙げられるのが、名ばかりな自主管理だ。  管理業務は、賃料の回収や騒音のクレーム対応、設備の故障や不備、共用部の清掃、退去後のクリーニング手配など多岐にわたる。自主管理の場合はこれらに24時間365日ひとりで対応しなければならないため、手が回らなくなるおそれがある。もし所有者が体調を崩せば、誰も管理できなくなるので、ずさんの一途を辿ってしまう。  委託管理でも安心できない。サービス内容や対応の良し悪しは管理会社によってまちまちだからだ。高い管理料をとりながら清掃が行き届かなかったり、対応が遅くクレームになったりすることもある。  安孫子氏が指摘するのは、巡回の頻度が低いことだ。 「管理会社が定期的な巡回を怠り、現状の把握ができていないことが考えられます。物件規模によりますが、最低でも月に2回は現場を見るのが好ましいです」  また仲介会社の説明不足も無視できない。 「契約時もしくは鍵の引き渡し時に入居者に対し、禁止事項の説明をきちんと説明していないことも原因として考えられます。たとえば、洗濯機を使う時間帯の説明や、ゴミ出しルールについてです」
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きちんと管理されていない物件のせいでエリア自体が敬遠される
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