「甘えちゃってSorry」の成功を後押ししたYouTubeの「歌ってみた」文化。AYA a.k.a. PANDAの足跡<ダメリーマン成り上がり道#22>

HIPHOPにはない「歌ってみた」文化

――「甘えちゃってSorry」が小学生まで広まったのはYouTubeの影響も大きいでしょうね。 AYA:「そうなんでしょうね。あとTikTokでもかなり広まった印象がありました。YouTubeでは『歌ってみた』的な動画がどんどんアップされるのが衝撃で。ラッパーがリミックスを作ってくれることには過去にありましたけど、カラオケで歌ったのをそのままアップした動画とか、アコギで歌ってくれた動画もあって、すごく感動しました。HIPHOPにはない文化だったので」 正社員:「やっぱりYouTubeの登場はMCバトルの世界でもデカかったですよ。MCバトルも、バトルの動画とかバトル用のビートを勝手にアップする人が増えたからこそ広まったと思うし」 ――「甘えちゃってSorry」のヒット以降、ライブの客層は変わりましたか? AYA:「メッチャ変わりましたね。とりあえず女のコが多くなって、最前がみんな女のコの日もあるから見晴らしがいいです(笑)。スリチクのときはお客さんは男性ばっかりで、『甘えちゃって~』からホントに女の子が増えたから、『なるほど~』って思いました」 正社員:「アヤパンのヒットとか、ちゃんみなの人気とかを見ていると、自分が女のコのお客さんを増やすために努力してきたことって、やり方も間違っていたのかもとも思いましたね。戦極はまだ女性の割合が1~2割で、そんなに増えてもいないんです」 AYA:「やっぱMCバトルって怖いんじゃないですか? あと、たぶん難しい」 正社員:「そうね。女子が好きになるポイントがない!」 AYA:「あと女のコ視点では、MCの見た目は大事かも」 正社員:「それは大きいね。1~2割でも女性客がいるのは、最近は見た目がいい男子がバトルに出ることが増えたからだと思うし」 AYA:「それは残念ながらある!」

MCバトルの女性ファンは“卒業”してしまう?

正社員:「でも、そういうお客さんは長くないんだよね。たとえば高校生ラップ選手権のとき、言xTHEANSWERが負けたのを見てボロボロ泣いた女のコとかは、今はもう残ってないと思うんですよ」 AYA:「そんなコいたんだ!」 正社員:「いたよ。俺も衝撃的だったから、この話は色んな場所で言ってるんだけど、あれはMCバトルの歴史が変わった瞬間だったと思う。でも、そういうファンは時間が経てばいなくなるんだよ」 AYA:「卒業していくね」 正社員:「やっぱ難解だし、暴力的な部分が多いからね」 AYA:「もっと本質を好きになってもらえたらいいですよね。フツーに見たら『え、何でこんな悪口を言い合ってるの?』ってなるじゃないですか。私も最初そうだったし。でも、それこそ『8 Mile』じゃないけど、日常生活の延長にラップがあって、それをバトルで競っているのがわかると、『やってること超カッコイイじゃん』って思ったし」 正社員:「そこを上手く見せたのが高校生ラップ選手権だったんだろうね」 AYA:「生い立ちを追ったりね。BAD HOPはそういう背景もあって人気になった部分あるし」 正社員:「BAD HOPはファンと一緒に成長していく過程を見せるのも上手かったよな。でもアヤパンの変化もマジですごいよ! 最近のライブのときのインスタの写真を見ると、ファンの女のコがスマホを掲げてアヤパンのステージをメッチャ撮ってるんですよね。青森とかの地方でもそんな感じで。うちらのイベントでライブやってたのが信じられないなと」 AYA:「スーパー昔ですから! 私も徐々に右肩上がりで頑張ってきたんですから」
<構成/古澤誠一郎> 【AYA a.k.a. PANDA】 ‘17年11月1日に配信リリースした「甘えちゃってSorry」のMVが数百万再生回数を超える大ヒットを記録したフィメールMC。最新楽曲は7月リリースの「死んでよBABY」
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
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