失踪した元技能実習生を直撃。彼らはなぜ「不法就労」に至ったのか?

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なぜ彼らは「失踪」したのか?

 1か月の給料がマイナス2万円の明細書という衝撃的な実態を描き、「低賃金」どころか「無賃金」という奴隷労働の実態を浮き彫りにした第一回は大きな衝撃を与えた保守言論誌『月刊日本』の連載、「ルポ 外国人労働者」。  同連載では現行の技能実習制度や現役の技能実習生の問題を中心に伝えてきたが、劣悪な労働環境から逃れるために実習先から失踪する技能実習生が後を絶たない。それでは、実習先から姿を消した失踪者たちはどこへ行ったのか。実習先から失踪した不法滞在者、不法就労者たちはどのような生活を送っているのか。  メディアの報道等により技能実習生や実習先の問題、「失踪前」の問題は広く知られるようになってきたが、元技能実習生や失踪先の問題、すなわち「失踪後」の問題は未だによく分かっていない。 『月刊日本 12月号』掲載の同連載は、失踪した技能実習生の一人と接触することができた。今月号では、知られざる失踪者の実態に迫りたい。
月刊日本2019年12月号表紙

月刊日本2019年12月号

5か月間給料がもらえなかった

 本連載の初回で仙台の建設会社で技能実習を行っていたグエンさん(25歳男性・仮名)、ホアンさん(24歳男性・仮名)の話を紹介し、一か月の給料がマイナス2万円だったという実態を伝えた。その中で彼らは「自分たち以外に失踪した実習生がいる」と話していたが、この度、在日ベトナム人の支援活動に取り組む浄土宗寺院「日新窟」の協力を得て、その一人であるフンさん(23歳男性・仮名)と接触することができた。  フンさんはベトナム南部のヴィンロン省出身。5人家族の三男で、家族を助けるために100万円の借金を背負って2016年9月に来日、翌月から仙台の建築会社で技能実習活動を行っていた。 「グエンさんとホアンさんが話したように、実習先の会社は酷かった。平日は仕事中に社員の人から『バカ』『アホ』『ベトナムに帰れ』と暴言を吐かれる、ヘルメットや角材で殴られる安全靴で蹴られる太ももを角材で殴られて傷ができ、痛みが数週間続いたこともあります。休日は社長に呼び出されて社長宅の建設を手伝わされる、社長の車を洗車させられる、社長の田んぼで田植えをさせられる。真夏の田植え作業では熱中症にかかりました」 「一か月のうち26~28日働いても、15日分の給料しかもらえず、1か月の給料は7~9万円。失踪前の数か月は働かせてももらえず、給料は一円ももらえませんでした。仕方なく日本に来ている友人たちに相談して、みんなから数万円ずつ銀行振り込みでお金を借りました。借金は全部で17万円くらい。給料がもらえない5か月間の食費は10万円。ずっと一日一食で過ごしていて、お肉が食べられるのは週に一回だけでした」  暴言、暴行、低賃金、雑用、そして無給――渡航費用の借金を返すどころか、友人から借金をしなければ生きていけない状況に追い込まれたということだ。これでは誰もが逃げ出すことを考えるだろう。 「自分と同じように日本で技能実習をやっている友人に相談したら、『絶対に失踪した方がいい。うちの会社の寮に来い』と勧められました。それである晩、仙台の寮から逃げ出して友人がいる名古屋の寮へ移りました。もちろん会社には私が寮に住んでいることは内緒です」  技能実習生の在留カードは失踪した時点で失効する。この時点でフンさんは不法滞在者になった。
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実習生を不法就労に追い込むのは「日本社会」
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月刊日本2019年12月号

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