安倍晋三首相(中央)に続いて自民党本部に入る今井尚哉氏(右) 時事通信社
国家を私物化する安倍晋三・国民を裏切り続けた七年間
11月20日で桂太郎(第11・13・15代内閣総理大臣)を抜き、憲政史上最長の在職日数となった安倍晋三総理。この間、安倍総理は官僚人事を壟断し、自身の手駒として動く忠実な下僕を主要ポストに据え、自身の「身内」に利権を分け与え、嘘を嘘で糊塗し、法や民主主義を踏みにじり、公文書を捏造させ、国家を私物化してきた。
安倍総理は「政治は結果」というが、その結果は、粉飾だらけのアベノミクス、失敗だらけでカネをばらまく外交とろくな成果も見られない。
『月刊日本 12月号』では、総特集として、長期政権の驕りと緩みが噴出しまくっている安倍政権を批判する「国家を私物化する安倍晋三 国民を裏切り続けた七年間」を掲載している。
今回はその特集から、ジャーナリストの森功氏の論考を転載し、ここに紹介したい。
国家・国民ではなく安倍首相のために働く官邸官僚たち
── 第二次安倍政権では、首相秘書官兼首相補佐官の今井尚哉氏を中心とする「官邸官僚」が突出した力を持ち、霞が関を牛耳っています。森さんは『官邸官僚』(文藝春秋)で、この官邸官僚の弊害を指摘しています。
森功氏(以下、森):今井さんをはじめとする官邸官僚は、決して古巣の省庁のトップを走ってきたわけではありません。安倍さんの絶大な信頼を獲得し、思いのままに権勢を振るっているのです。その権勢は安倍さんの威光なしには成り立ちません。
本来ならば、国の政策を決める際に、各省庁の幹部が総理に対して直言しなければならないはずです。ところが、
官邸官僚に抑え込まれて、各省庁がまともに政策を提示できなくなっています。
「内閣人事局」によって省庁の幹部人事を握られている恐怖もあり、官邸の意向には逆らえなくなっているのです。
各省庁はそれぞれの専門分野に精通しています。問題点を総理にきちんと説明し、それを整理した上で政策を練るべきです。ところが、そのプロセスがなくなってしまっているのです。霞が関システムの崩壊と言ってもいいでしょう。
首相が掲げる政策を、官邸官僚が経産省に丸投げし、経産省が政策を作っています。その政策に他の省庁が従わざるを得ない状況です。安倍政権が「経産内閣」と呼ばれる所以です。
── 今井氏らは、総理の分身であると同時に、総理の振付師とも呼ばれています。
森:「一億総活躍社会」というスローガンを作ったのも今井さんやそのブレーンたちです。今井さんは古巣の経産省のブレーンを使って政策を作っています。その一人が、最近タレントの菊池桃子さんと結婚した
新原浩朗・経済産業政策局長です。彼は、内閣府政策統括官として、働き方改革や幼児教育の無償化などの目玉政策を進めてきた人物です。
── 今井氏の頭の中には安倍内閣の支持率をいかに上げるかしかないと指摘されています。
森:今井さんの危うさはそこにあります。確かに彼らは安倍さんのために必死に働いています。しかし、
国家、国民の利益のために働いているように見えないのです。
今井さんは、ひたすら
安倍さんを守るということに徹し、そのためには手段を選びません。9月の内閣改造で今井氏が
首相秘書官に加えて首相補佐官を兼務することになったのも、安倍さんを守ってきた論功行賞でしょう。
第一次安倍政権の崩壊を教訓として、彼らは内閣支持率低下を極端に恐れています。とにかく、
国民受けする、耳障りのいい政策を打ち上げることばかり考えています。ところが、国民受けを狙った政策はことごとく失敗しています。
── 今井氏はなぜ安倍総理の信頼を得られるようになったのでしょうか。
森:今井さんが特別優秀なのかどうか私にはわかりませんが、安倍さんは「今井ちゃんはなんて頭がいいんだ。本人の頭の中を見てみたい」と語るほど、高く評価しているようです。
もともと今井さんは経済産業省で主に産業政策・エネルギー畑を歩んできましたが、第一次安倍政権が発足すると内閣官房に出向し、総理秘書官に就任しました。
今井さんは経団連会長を務めた今井敬さんの甥に当たりますが、敬さんの兄が通産事務次官を務めた今井善衛さんです。安倍さんのお祖父さんの岸信介が商工大臣だったときに、その秘書官を務めていたのが善衛さんです。安倍さんはそのことを知り、それから二人は急接近していったようです。
2007年9月に第一次政権は幕を閉じました。安倍さんは潰瘍性大腸炎に悩まされ、誰もが政界での再起を危ぶんでいました。そんな中で、同じ経産官僚の長谷川榮一さんとともに安倍さんを励まし続けたのが、今井さんでした。長谷川さんの発案で、今井さんは安倍さんを高尾山登山に誘い、三人で山道に挑戦したといいます。こうして、今井さんは安倍さんと特別な関係を築くことになったのでしょう。