産婦人科医の村上麻里さんは、日本における妊産婦の死亡原因のトップが自殺というショッキングな事実を紹介。背景にあるのが、出産後に気分の落ち込みを起こす「産後うつ」だ。
うつの可能性のある妊産婦の割合は、初産婦の場合、産後2週間に多い。自殺する妊産婦の割合をイギリス、スウェーデンと比べると、日本人女性は突出している。村上さんは原因を、母親へ向けられるプレッシャーと考える。
「日本社会には『お母さんはこうあるべき』という考えが強い。芸能人がお子さんとレジャーに出かけたことをブログに書くと炎上することがありますね。それに、お母さんたちは育児がうまくできないと自分を責めがちです」
興味深いのが、産後うつは男性も発症しえること。男性の場合、子どもが誕生後3~6か月後と、女性に比べると発症が遅い。10人に1人がかかると言われるが、決して少なくない数字だ。「女性だけではなく男性にも何からしらのケアが必要」と村上さんは強調する。
男性も孤独を感じる。ママ友とのつながりで気持ちが楽に
著作『おっぱいがほしい!男の子育て日記』(新潮社)が人気の作家・樋口毅宏さんは、家事と育児のほとんどを担当。お子さんが生まれたばかりのころは「記憶がない」と話し、参加者の共感を得ていた。
うつ状態の自覚については、「たしかに抑うつというか、疲れて落ち込んだときはありましたね。徐々に慣れてきましたけど」と当時を振り返る。
樋口さんの場合、奥様の出身地である京都に引っ越し、慣れない場所での育児だったこともプレッシャーになった。
「子どもが小さいときには人とのつながりが希薄で、不安ばかりでした。そんなとき、ツイッターで子育ての悩みを投稿したら返信があって、嬉しかったですね。リアルじゃなくても、ネットでのつながりも大切だと感じました」
現在は、保育園のママ友との交流を持ち、子育てについて話す場がある。そのため、育児中の孤独を強く感じることはなくなっている。
ネット、リアルを問わず、誰かとつながっておくこと、自分だけでどうにかしないようにすることの大切さを訴えていた。