地方創生にゆるく携わる人を増やす。マグマシティ・鹿児島市の取り組みとは

名山町の小さな古民家から生まれた「バカンス」

バカンス 名山町は、鹿児島市の中心街である天文館から少し外れたエリアに位置し、昭和レトロな雰囲気を醸し出す家屋が集まる場所だ。  江戸時代には、交易のために堀が整備されていて、水面に映る桜島を「名山」と称したことから、名山町という呼び名になったといわれている。  そんな昭和の下町らしさを残し、情緒あふれる名山町に「バカンス」という場所が存在する。ここはもともと空き家だった古民家を改装してできた場所。今では、地域の人同士の交流や、仲間が気軽に集まれる場所へと生まれ変わった。  ラジオ体操や新聞を読む朝活、フリーコーヒー、サイレントディスコなど、イベントを主催するオーナーによって趣向が違うのもまた特徴だ。 バカンス 発起人は名山町近くの鹿児島市役所で働く森満誠也氏。 「仕事柄、地域に根ざして住民のことを考える機会が多い中、もっと地域コミュニティを活性化できないかと考えていた。その時にたまたま通りかかった名山町の物件が空き家になっていたので、半ば勢いで借りることを決めた。ただ、一人でやるよりも同じ想いを持つ人同士で運営した方が面白いと思い、共同出資者を募る形式をとり、バカンスを運営してきた。日替わりでオーナーが変わることで、イベントを行うにしても集まる人の顔ぶれが変わるので、多様なコミュニティが生まれる。バカンスを起点に、地域活性化に繋がればと思う」  バカンスに来れば、誰かと繋がれる。コミュニティ自体は小さいかもしれないが、空き家を生かした地域活性化の取り組みは、他の地域でも応用できそうだ。

後継者としての新たな挑戦である「LAGBAG MUSIC TOGO」

 鹿児島市の著名音楽家として知られる東郷和子氏が、1980年に創立した東郷音楽学院。以来約40年近くに渡って、次世代を担う音楽家の育成に貢献してきた。東郷氏のもとで教えを受けた生徒は4000人にも上るという。  そんな、歴史と伝統ある東郷音楽学院だが、最近では東郷氏の体調悪化や学院内の老朽化に伴い、次第に生徒数が減少していく問題を抱えていた。  もしかしたら、音楽学院がなくなるかもしれない。  窮地に立たされた状況の中で、新たな担い手として運営を引き継いだのが、同院卒業生の上山紘子氏と夫でありピアノ調律師の上山大輔氏だった。東郷音楽学院は今年5月に「LAGBAG MUSIC TOGO」としてリニューアルしたのだ。 「LAGBAG MUSIC TOGOは、東郷音楽学院が築いてきた伝統を壊さずに新しい息吹を入れ、日常に音楽のある暮らしを提案していきたい。オーケストラを立ち上げることで、社会人になっても楽器を演奏する楽しさを伝えたり、またピアノ以外の楽器のレッスンをスタートさせたり。東郷先生の想いを背に、私たちだからこそできることで、音楽の普及に努めていきたい」  音楽に造詣の深い卒業生を多く輩出した音楽学院を、地元にゆかりのある若い世代が引き継ぐ。後継者不足に苛まれる問題もある中で、LAGBAG MUSIC TOGOの取り組みは、創業者から次の世代へバトンをうまく引き渡せた好例なのかもしれない。
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「天文館」の活気を再び取り戻す
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