「今後、人手不足が深刻化する中で、アジア、特にフィリピンやベトナムからの労働力が期待されていますが、労働力の穴埋めという意識ではなく、
「働きにきてもらう」と迎え入れる気持ちで労働環境を見直していかないと、働きにくる外国人もどんどん減っていってしまうと考えたほうがよいでしょう」
そもそも、なぜ「労働力の穴埋め」といった上から目線の思考になってしまうのか。
「
『多少働きにくい要素があっても、貧しいアジア諸国の人たちは経済的に豊かな日本に働きにきたいと思うだろう』という驕りがあるゆえでしょうね。でも現実を見れば’10年に中国にGDP世界2位の座を明け渡し、今後も巻き返せる可能性はゼロ。韓国や、今後急成長が見込まれるマレーシアやインドネシアと比べても、
アジア経済における日本の経済的存在感は今後低下していくことは必至なのです」
雇用統計や貿易統計に加えて、政府効率、ビジネス効率、インフラ、マネジメント慣行といったさまざまな視点から調査を進め
た「国際競争力ランキング」(スイスのビジネススクールIMDが6月に発表)でも、日本のランクは63か国中30位で、中国(14位)はもちろん、韓国(28位)やタイ(25位)よりも評価が低いという結果になった。
<国際競争力ランキング>
1位 シンガポール
2位 香港
3位 アメリカ
4位 スイス
5位 アラブ首長国連邦
6位 オランダ
7位 アイルランド
8位 デンマーク
9位 スウェーデン
10位カタール
11位ノルウェー
12位ルクセンブルク
13位カナダ
14位中国
……
25位タイ
26位サウジアラビア
27位ベルギー
28位韓国
29位リトアニア
30位日本
……
63位ベネズエラ
「こうした指標から見ても『貧しいアジア諸国から憧れの日本に働きにいく』という構図が過去のものであることは明らか。
不動産ビジネスを展開する中国人など、資金力のない日本人に代わって、資金力と商才のある中国人が日本でビジネスを展開しているという構図です」
【参考記事】⇒
「中国人タワマン爆買い」煽りは時代遅れ。中国人不動産投資家はここに投資している
「日本はもはや憧れの国ではない」という現実を踏まえ、そのうえで外国人が働きやすい環境づくりを目指していくことが、日本が生き延びる道なのだ。
【岩崎博充氏】
経済ジャーナリスト。雑誌、新聞での執筆のほかコメンテーターとして活躍。著書に『
日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔永社)ほか