もう一つ労組が求めているのは、今夏のストライキが正当なストライキであると会社側が認めることだ。
ケイセイ・フーズは、ストが違法なものであったと主張し、1日当たり800万円を下らない損害を被ったとしている。しかし言うまでもなく、ストライキは労働者の権利として憲法で保障されている。あるストが正当なものとされるためには、事前に団体交渉を尽くしたかどうかといった条件を満たす必要はあるが、佐野SAのストが違法である可能性は極めて低い。
また、これらの要求を会社側に認めさせるため、労組はNEXCOとネクセリア東日本にも責任を問うている。ケイセイ・フーズを選んでサービスエリアの運営を委託しているネクセリアにも責任の一端があるはずだからだ。
うなだれる加藤正樹総務部長
加藤さんは、労使の対立が続く状況に対し、「会社側には対話に応じる姿勢がない」と嘆く。
「正直、ストライキなんてやりたくありません。でも会社側が話し合いに応じる気配はなく、ストをやらざるを得ない状況に追い込まれています。
サービスエリアは、運転手の人たちが休憩をする場所。きちんと運営しなければ、高速道路の安全性さえ損なわれかねません。NEXCOやネクセリアにも事態の解決のため、協力してほしいと思います」
ストライキを継続するかどうかは未定だが、加藤さん自身の復職や損害賠償の取り下げは引き続き要求していくという。
特に加藤さんの職場復帰は、SAで働く組合員らの悲願だ。およそ5年間パートで働いてきたという女性は、「加藤さんが来てくれたことで、ヒドい経営体制から解放されたんです。加藤さんは以前の上司とは全く異なり、私たちスタッフを気遣ってくれます。個人の意見を聞いてくれるんです」と話す。
加藤さんは、壊れたまま放置されていたエアコンの修理を会社に要求するなど、職場環境の改善に取り組んできた。だからこそ組合員からの信頼が厚いのだ。
別の女性も「加藤さんを私たちから取り上げないでください」と涙ぐんだ。全員で職場に戻り、加藤さんの下でSAを盛り上げていきたいという。
スタッフにこれだけ慕われている加藤総務部長の解雇になぜ会社は拘泥するのか。労使関係の対立を超えて個人攻撃にもなっているケイセイ・フーズ側の姿勢。決して許されるものではない。
<取材・文・撮影/HBO編集部>