カジノ誘致を巡る「利権」という幻想。甘い汁を吸えるのは誰なのか?

「甘い汁」はすべて海外のカジノ運営会社が吸う

 さて統合型リゾートに含まれるカジノであるが、日本人には当然にその運営ノウハウがないため海外のカジノ運営会社に「丸投げ」するしかない。そしてこの統合型リゾートで唯一大儲けできるところが、このカジノ運営である。まず統合型リゾート(IR)の運営主体は各自治体であるが、本来はテナントであり家賃を徴収しなければならないカジノ運営会社から家賃も取らず、逆に高額の成功報酬などを支払う契約となるはずである。またカジノ運営会社がこれらハコモノ建設のための資金を出すことなど絶対にない。  確かにカジノ運営とは簡単ではない。世界中から大手客(大金を賭けても平気な大金持ち)を呼び寄せて適度に巻き上げ、同時に世界中から集まってくるイカサマ師を排除しなければならない。日本人には絶対に無理である。  もし日本人がカジノを運営するなら、あっという間に世界中から腕利きのイカサマ師が押し寄せ、たぶん1日で数百億円くらいは持って帰られてしまう。消えた仮想通貨のような問題が毎日起こるわけである。

一筋縄ではいかない「カジノ運営」のノウハウ

 余談であるが、イカサマ師でなくてもたまたま大勝ちしてしまう大手客もいる。その大手客をあの手この手で帰さずカジノに留め、すっかり取り戻すのも運営会社のノウハウである。実際にラスベガスでは自家用機で来た大手客が大勝ちすると、空港の管制官を買収して離陸許可を出させず、ホテル代も食事もサービスするからと誘われて帰ってきた大手客からすっかり取り戻してしまうことなどお手の物。いくらでも裏技がある。  また大負けした大手客には賭け金を信用貸しすることもある。こうなるともっと負けてしまうもので、その回収もカジノ運営会社の重要な仕事となる。  さらに余談を加えると、こんな大手客の1人に日本人の柏木昭男氏がいた。世界のカジノで大勝ちを続け、映画のモデル(1995年公開の映画「カジノ」にK.K.イチカワとして登場)にもなっていたが、1992年に自宅で何者かに暗殺されており、事件は迷宮入りしている。この柏木氏が訪れたカジノの中にはトランプ大統領が経営していたアトランティック・シティのトランプ・プラザ(2014年に倒産)も含まれる。実際に2人は面識があり、トランプが自分のカジノに誘ったようで、結果は1勝1敗だったはずである。
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カジノなしでも訪日外国人が増える中、効果はありや?
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