現在収容中の、カメルーン人のポールさんもハンストの末、仮放免が決まった。しかし20万円の保証金が払えず、外にでるめどが立たなくて困っていた。
「『引っ越しをする前に、住所の変更を入管に届けなければいけない』というルールに変わっていたことを私は知りませんでした。たったそれだけの理由で収容され、3年4か月もここにいるのです。カメルーンは紛争中で、家族は殺されました。私はカメルーンには帰れない。でも入管はわかってくれない」
ポールさんと同じように、保証金のめどが立たず、外に出ることができない人も多い。また、ある支援者が「被収容者の代わりに保証金を払う」と申し出たら、100万円を請求されたというケースもある。人によって値段の違う、曖昧な保証金の基準。入管以外、誰にもわからない基準だ。
マジッドさんの解放から1週間過ぎたころ、筆者は彼に電話をしてみた。
「出頭日が不安だね。夜も眠れないよ。外に出てひとつだけ良かったのは、外の空気を吸えることだけだね」(マジッドさん)
やっと解放されても、収容の繰り返しに怯える日々は、どれだけの苦痛だろうか。人の1度きりしかない尊い人生を、まるで弄んでいるかのようだ。この歪んだ制度に、この国に住む人たちはいつまで目を背けているのだろうか。
<文・写真/織田朝日>