アクセンチュア、ソニー、ユニリーバが推進するダイバーシティ。「多様な人材がいる方がイノベーティブなものが生まれやすい」

テクノロジーを駆使した「ダイバーシティ」の叶え方

 また、テクノロジーを駆使して「働きやすい環境」を作っている事例もある。アクセンチュアでは、聴覚障害を持つ人でも会議に参加できるよう、他者の発言をリアルタイムで文字に起こすAIを活用しているという。また、社内のチャットボットを使って、簡単かつ機密性を担保した形で社内の手続きができるようにもなっている。  「社内手続きは全て中国・大連で行なっている。例えばLGBTの人が、関連する社内手続きを行ったとしても、普段一緒に働いている社内の人間には誰にも知られずに済ますことができる」と篠原氏。カミングアウトを望まない人にとっては、過ごしやすい環境であると言える。

女性のみを集めたキャリア研修「こういう研修があること自体が嫌」

 「異なる見方・視点を大切にする、というのは、ソニーのメンバー誰もが信じて疑わないこと。会社、社会、社員、社員の家族、全てが持続可能であることが大事」だと話すソニーの望月氏。ソニーでは、社員の男女比はほぼ1対1だという(技術職を除く)。女性管理職も増えてきている中、女性だけを集めたキャリア研修を実施した際、ある20代の女性社員から「こういう研修があること自体が嫌いです」と言われたという。  「こういう研修があるからこそ、差別的な考え方が無くならないのでは。こうしたキャリア研修をやるのであれば、男性も含めて一緒くたにやってほしい。そうでなければ、周囲の目線やマネジメントの考え方も変わっていかない」という意見に、望月氏は唸る。「若い世代は、男女の差を感じずに生きてきた。ちょっと世代が離れると、そうした価値観も変わっていく。社内でそういった発言をする人が出てきたことは、一つ壁を超えられたのかもしれない」。

「チームの一員として何が出来るのか、の方がずっと重要」

 当フォーラムを主催する認定NPO法人ReBitの代表理事である藥師実芳さんも、トランスジェンダーかつADHDであり、就活時に苦労を経験した一人だ。「社会人になってやっと、セクシュアリティやADHDであるということよりも、チームの一員として何が出来るのか、何で貢献できるのかということの方がずっと重要であると実感した」と話す。  「ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業は増えてきている。自分なんか、と選択肢を狭めたり諦めたりせずに、こうした場を利用して情報を掴んでほしい。あなたがどんな生き方をしようとも次世代のロールモデルになっていくし、あなた自身にパワーがあるんだよ、ということを伝えたい」と熱く話してくれた藥師さん。マイノリティという言葉にとらわれず、誰しもが自分らしく働くける社会へ一歩前進したことを実感することのできるフォーラムだった。 会場内の様子 googleのブース <取材・文/汐凪ひかり>
早稲田大学卒業後、金融機関にて勤務。多様な働き方、現代社会の生きづらさ等のトピックを得意分野とし、執筆活動を行っている。
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