「カニメロン」菅原一秀元経産省への追及はこれからが本番。大臣辞任だけでは済まない

統一教会問題は未だ追及されず

菅原一秀 とは言え、女性蔑視発言やパワハラ、秘書給与ピンハネといった疑惑や不祥事は国会議員のものとしては決して軽くない。週刊文春に取り沙汰された「カニ、メロン、みかん、筋子、たらこ」といった贈答品目も下世話で笑えるし、公職選挙法に触れる違法行為だ。問題を取り沙汰され衆議院予算委員会で立憲民主党の本多平直・杉尾秀哉両氏から追及を受けていたにもかかわらず、なおも選挙区内で秘書を通じて香典を送る無反省ぶりには開いた口が塞がらない。  これほどまでにトピックスが多ければ無理もないことだが、菅原氏をめぐる問題の一つである「統一教会」との関係は、一連の騒ぎの中では俎上に上がっていない。  菅原氏と統一教会の関係については、当サイトで連載を持っているジャーナリストの鈴木エイト氏が2年前から追及してきた。2017年11月に開催された統一教会系団体「勝共UNITE」による「改憲2020実現集会」に菅原氏が出席したとされたことが発端だ。  直後、鈴木氏は菅原氏の事務所に取材のFAXを送付したが菅原氏側は無視。回答がないため鈴木氏は、街頭で選挙活動中の菅原氏に直撃取材を試みたが、菅原氏は「覚えてない」「何か証拠ある?」などととぼけて見せた。  さらに鈴木氏は2017年衆院選の際に統一教会信者が菅原氏陣営の運動員として入り込んでいたとする情報を得て、菅原氏への取材を続けた。菅原氏は運動員の件を否定したが、元秘書の証言と細部で食い違いがあり、その点を確認しようとする鈴木氏を無視するようになった。 ◆統一教会イベントで2世信者を激励した議員に「信者運動員使用」疑惑浮上。本人を直撃<政界宗教汚染~安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第9回>(鈴木エイト)  鈴木氏は取材を続ける中で、昨年から今年にかけて菅原氏や運動員が自分の顔写真や名前が入ったカードサイズのカレンダーを地元の街頭で配布している現場を目撃。公選法違反に当たる可能性をTwitter上で指摘したところ、「プライバシー侵害」としてTwitterアカウントをロックされた。  この件も含めて確認を求める鈴木氏の電話を、菅原事務所は居留守を使って無視。菅原事務所は、事務所に直接取材に訪れた鈴木氏に対して、同行した私もろとも警察に110番通報。秘書から「お待ち下さい」と言われソファに通された私たちを、菅原事務所は「建造物侵入罪」にあたるとして虚偽の刑事告訴を行い、私たち2人は後日、練馬署で約6時間の事情聴取を受けた。 ◆「建造物侵入罪」濫用で狭められる報道の自由(藤倉善郎) ◆公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か(鈴木エイト)  統一教会との関わりに加えて、ジャーナリスト取材を妨害する目的での虚偽告訴という問題が、菅原氏に加わった。  この間も鈴木氏と私は菅原氏に公開質問状を2度送付したが、菅原氏は質問に一切答えず無視を貫いている。

経産省での大臣会見も出入り禁止に

 こんな菅原氏が9月11日に経産相に就任した。鈴木氏と私は大臣に統一教会の関係と虚偽告訴問題についての認識を尋ねるため会見を取材しようとしたが、経産省広報室から質問内容を事前検閲され、取材を拒否される。  私は、検閲は不当として広報室に再検討を求め広報室の野澤泰志室長は了承したが、野澤室長はそのまま連絡を絶った。そのため私は鈴木氏と連れ立って経産省に赴き受付で名前等を書いたところ入館証をもらえたので、そのまま菅原経産相の就任会見を取材した。挙手していたが当ててもらえず質問はできなかった。  後日、野澤泰志室長は電話でこの件について、「(取材は難しいと)約束したにもかかわらず強引に(庁舎に)入ってきた」などと事実に反する内容を理由として、鈴木氏と私について「永劫に」大臣取材を禁じると通告してきた。 ◆「秘書給与ピンハネ」疑惑の菅原経産相会見、ジャーナリスト2名が「永劫に」出入禁止に(藤倉善郎)  それまで菅原氏が取材を無視してきたことから、大臣会見が統一教会や虚偽告訴についての認識を尋ねる唯一の機会だった。しかしこれを経済産業省広報室が阻んだのだ。  国民の知る権利、取材・報道の自由に関わる重大問題において、菅原氏と経産官僚が完全な共犯関係を演じて見せた。政治学者の田中信一郎氏はこれについて、経済産業相は経済政策のみを担当するのではなく政府一員である国務大臣なのだという点を指摘し、取材を拒む菅原氏や経産省を批判している。 ◆内閣制度と矛盾する菅原経産相の取材拒否。マラソン会見でもして説明責任を果たせ(田中信一郎)
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追及はこれからが本番
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