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『Willy And The Poor Boys』Creedence Clearwater Revival(1969)
「’60sにおける反抗のロック」というイメージで言えばフォークやサイケを思い浮かべがちだが、ブルースやカントリーをベースに土くさい豪放磊落なロックンロールを展開した名バンド、CCRも忘れてはならない。
「俺は上院議員とか金持ちの息子じゃない」と叫び、徴兵逃れの特権だけでなく、鼻につく金持ちそのものを叩いた「フォーチュネイト・サン」は現在のアメリカでも頻繁にカバーされ続けるタイムレスなアンチ・エスタブリッシュ・ソングだ。
また、当時のニクソン保守政権に対しての一般市民のデモを歌った「エフィジー」にも、アメリカ庶民の観点からのストレートな怒りが。なまじ当時のトレンドに乗らず、古くからの自然体の音楽表現ゆえ、時代のフィルターを超えて伝わりやすい強みがある。
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『Psychedelic Shack』The Temptations(1970)
力強いメッセージ・ソングで溢れ、「ブラック・イズ・ビューティフル」とも称された時代のソウル・ミュージックの影の立役者としてプロデューサー、ノーマン・ウィットフィールドの存在を忘れてはいけない。
当時台頭していたスライにライバル意識を燃やし、文字どおりサイケなサウンドに強い社会意識を備えた楽曲で彼は「いい子」イメージだったモータウンをタフでワイルドな路線に変えた。その頂点がテンプテーションズの本作だ。
全曲ノーマンのオリジナルによる本作では、大ヒットしたタイトル曲で「やりたいように生きようぜ」と叫び、後にエドウィン・スターのカバーで大ヒットした「ウォー」で「そんなものは無意味」と高らかに言い放ち、「フレンドシップ・トレイン」で「争いや違いを超えて生きることを学ぼうぜ」と増強されたベースラインと攻撃的なエレキギターと共に訴える。半世紀を経てなおも有効なメッセージの数々だ。
<取材・文/沢田太陽>