恵方巻の大量廃棄、飲食店におけるノーショーやドタキャンの実態。フードロスに関連するニュースが相次いで報道され、社会問題化しているのは周知の事実だ。フードロスを出さない意識や工夫はもちろん、食を消費する我々のモラルのあり方も考えなくてはならないだろう。
コールドプレスジュースはフードロスが出やすい一方、廃棄せずにうまく循環するよう工夫しているとコウ ノリ氏は言う。
「ジュースを作って余った残渣(絞りかす)を活かして、ビーガンカレーやスープなどの原料にしたり土に還して肥料にしたりと極力ロスが出ないようにしている」
また、生産者と関わる中で、東京と地方の生産に対する考えの違いについて説明した。
「東京では地方に比べて、物理的な狭さから、フードロスをなくそうにも限界があると考えられている。しかし、産地側である地方には、ロスを出さず循環を産むための生産方法が当たり前に行われていたりする。東京では、そのやり方すら知らないこともあるので、もっと産地側の生産方法にも着目した方がいい」(コウ ノリ氏)
他方、藤川氏は製造工程でロスを発生させないよう心がけていることを述べた。
「温度管理やチーズを練る量、入れるお湯の量など一定にできるところは均一化している。作り手によってブレが出ないように工夫し、ロスを生まないように意識している」
食は消費者に届けるために、一度作ったら終わりではなく、どうしても作り続けなくてはならない。そのため、均一化して味が安定するよう努めるのはもちろん、日々のルーティンとなる作業の中で、いかに地球環境を意識した取り組みができるかが大切になってくるのではないだろうか。
食の問題はまずは考えること。そして身近に感じること
食との関わり方を見直し、明日から行動に移していくためには、どのようなことに留意すればいいのだろうか。セッションの終わりに設けられた質問タイムに、筆者が登壇者らに「明日から我々ができること」について尋ねた。
「フードロスなど食にまつわる社会課題は、ニュースやネットからいくらでも得られるので、まずは考えること。そして身近に感じること。現状を知った上で、どのような行動を取ればいいのかを意識して、小さなアクションを起こしてみることが大切」(コウ ノリ氏)
現状把握の大切さについて触れたコウ ノリ氏に対し、田村氏は問題の根深さについて指摘した。
「問題解決はそう容易いことではない。明日からコンビニがなくなったら不便を強いられるのと一緒で、現状の生活をいきなり変えるのは難しいだろう。無駄に食材を買わない、食べ残しを出さない、プラスチック製のレジ袋や食器をもらわないなど、小さなことの積み重ねでしか問題解決の糸口は掴めないと思う」(田村氏)
トークセッションのモデレーターを努めた菊池氏は、食や生産を取り巻く環境に精通する立場から、次のように締めくくった。
「食に関連するフードロスやプラスチックゴミ問題など、何か1つ解決したからといって問題が全て解決するような論調が多い。メディアも過剰に煽りすぎている印象があり、我々はそれに揺さぶられないようにするべきだ。フードロス問題1つとっても、フードロスが起きている流通構造を知ることで、本当の原因に気づくことができる。なので、まず意識すべきは実態を知ること。報道される情報だけでなく、一次情報を得て、そこからどう行動していくか考えることで、的外れな行動を起こさなくて済む」
<取材・文/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。