【2018年】
テック系メディアでも論調に方向転換が見られ始めたのが2018年だ。
2018年01月04日に、WIRED.jp が『
WeWorkの野望──「2兆円企業」が見通す働き方の未来』を掲載する。WeWork の先進性を伝えるとともに『役職名が追い付かないほど急拡大する組織』『試されるWeWorkの「持続性」』と、危うさについても言及。特に、賃貸料の上昇により、破綻する可能性を危惧している。WIRED.jp は初期の頃から WeWork を絶賛していたが、ネガティブな要素も記事中に混ざるようになる。
2018年02月02日、Forbes JAPAN に『
孫正義、WeWorkへの即決40億ドル出資の舞台裏』が掲載される。大型出資がどのようにおこなわれたのか、ドラマ仕立てで紹介。評価額は高過ぎるが、企業としての実行力があると。データに基づいたオフィス設計、不動産以外の付加価値など、WeWork の価値について詳細に解説。
この記事は、のちの孫正義とニューマンCEOの人間関係を推し量る上で、重要な内容になっている。
2018年はその後も WeWork とソフトバンクについての記事が見られるが、それらを見る限り、この時期の WeWork とソフトバンクは、非常に良好な関係なのが分かる。
年初にネガティブな要素も入れた記事を出した WIRED.jp が再び気になる記事を出したのは、09月17日。『
サーヴィス企業を目指すWeWork、相次ぐ買収で問われる「Powered by We」の真価』が掲載された。
WeWork の価値を説く一方で、「WeWorkの企業価値はレンタルオフィス世界最大手の IWG(旧リージャス)と同程度だという議論が根強くある」と、疑問視する声も掲載。WIRED.jp の記事を追うと、徐々に化けの皮が剥がれていくような気持ちになる。
そうした気配が次第に強まってきたのか、10月には2つの不穏なニュースが出てくる。
2018年10月10日、日本経済新聞に『
ソフトバンク、米シェアオフィスに過半出資か』、同日ロイターに、『
ソフトバンクG株が3日続落、シェアオフィス企業への大規模出資で協議』が掲載される。
前者の記事では、過半数の株式を取得する方向で協議しており、投資総額は150億~200億ドルと。明らかに過剰な投資額が登場する。
この2つのニュースからは、WeWorkへの大規模出資がリスク要因と見られていることが分かる。また、ソフトバンクの強いラブコールと、市場からの強い不信感が伝わってくる。
ただ、この時期の記事は、WeWork への投資額はともかくとして、事業自体はどこでも好意的に書かれている。問題は、投資額が異常で、収支が伴っていないことだ。
【2019年】
明らかに「潮目」が変わったのは2019年だ。この時期から、WeWork への評価が下がる記事が目立ち始める。
2019年01月08日、日本経済新聞に『
ソフトバンクG、ウィーワークへの追加出資大幅縮小』が掲載される。ソフトバンクグループは、赤字経営の米シェアオフィス大手 WeWork に対する出資計画を大幅に縮小したと言う内容だ。WeWork への風向きが大きく変わった瞬間だ。
そしてそのおよそ一週間後、1月17日に、ついにBUSINESS INSIDER JAPAN に、『
ウィーワークCEO、所有ビルを自社に貸して数百万ドルを手に』が掲載される。ニューマンCEOが、自身が一部保有するビルを WeWork に提供して、数百万ドルを得ていたと。賃貸契約の全期間を通すと、賃料は1億1000万ドル(約120億円)になるとも。CEOの不誠実な行動が、表に出始めたわけである。
そして3月から、事業にブレーキが掛かり始める。
2019年03月02日、TechCrunch Japan に『
コワーキングスペースのWeWorkが300人解雇』の記事が掲載。グローバル従業員の3%、数にしておよそ300人を解雇したと。拡大路線に陰りが出る。
さらに、WeWork が上場に向けて動きだしたことによって(参照:『
米ウィーワーク運営会社、上場手続き開始』|2019年4月30日日経新聞)、その経営に厳しい目が向けられると同時に、内情が外から可視化され始める。
2019年04月30日、TechCrunch Japan に『
WeWorkが非公開で上場申請書を提出、推計収入2030億円、赤字は2120億円』が掲載。
また、奇しくもこの直前に、貸会議室大手のティーケーピー(TKP)が、世界展開するIWG(旧リージャス)から日本事業を買収すると発表したことを受けて、2社を比較して、その収益性を疑問視する2つの記事が発表されている。
●『
シェアオフィス、陣取り合戦 収益確保に課題』(2019年04月15日、日本経済新聞)
●『
儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ』2019年04月17日、東洋経済オンライン)
5月以降、何とか資金を得ようと足掻いている様子が見てとれる記事が増え、8月になると上場が近いということで、会社の財務的実態を指摘する記事が大量に出てくる。ほとんどは否定的で、投資を避けるように促している。
2019年08月15日には、日本経済新聞も『
上場控えるウィーカンパニー、巨額赤字の実力は』を掲載し、収益の不透明さが一番の課題と指摘している。
2019年08月21日のBloomberg 『
ウィーワークのIPO目論見書は「難読化の傑作」-アナリストが警告』は皮肉に溢れている。ポジティブな状態ではないから、非常に分かり難くしたのだろうと。
2019年08月22日にはかつて注目企業のランキングに常に上位で取り上げていたForbes JAPAN も辛辣な記事が載る。
『
上場申請したWeWork、投資を控えたい6つの理由』が掲載される。財務、事業の問題とともに、創業者夫妻のリスクも指摘。
いずれの記事も、上場が歓迎されていない様子が伝わってくる。