注目のスタートアップだった WeWork の評価はどこで反転したのか?

注目のスタートアップとして時代の寵児だった2014~2017

 WeWork の設立は2010年2月だ。そこで、この時期から、日本のメディアでの掲載をたどっていく。全てを取り上げると煩雑なので、注目すべき動きを中心に取り上げていく。 【2014~15年】  2014年12月18日、WIRED.jp に『コワーキングスペースを貸すNYのスタートアップが急成長、企業価値は50億ドルにも』という記事が掲載される。WeWork が巨額の資金調達に成功したことを伝えるものだ。5年後に、ここから9倍以上まで上がったことを考えれば、どれだけ急な高騰だったのかが分かる。  翌年も注目のスタートアップというポジションは変わらず、2015年12月18日にはForbes JAPANの 『2015年「最もホットなスタートアップ企業」50社ランキング』内に掲載される。オフィスシェア分野で、評価額102億ドルとして、31位に WeWork がランクイン。他のランクイン企業の評価額が数億ドルなのに対して、102億ドルという評価額は突出している。 【2016年】  2016年からは注目度に伴い、記事も大幅に増加した。そのどれもが絶賛する論調である。  2016年1月06日、Forbes JAPAN の『米国で最注目の「オンデマンド系」企業14社』内に掲載される。オフィスシェア分野で、評価額102億ドルとして、WeWork が4位に入っている。他に100億ドルを超える企業は、3位のウーバー(評価額:646億ドル)、14位のAirbnb(評価額:255億ドル)の2社。  Forbes JAPAN はかなりプッシュしており、3月には『新たに198人が億万長者に、若き起業家も多数』という記事に、WeWork の共同創業者アダム・ニューマンが掲載されている。  同じく3月には、日本のドメスティックメディアも取り上げ始める。日経クロストレンドの『ノマドワーカー感激! “世界最強”のコワーキングスペース「WeWork」がスゴい』(3月14日)、THE BRIDGE で『オフィスシェアの「WeWork」が4.3億ドルを調達、評価額は160億ドル』という記事が立て続けに掲載される。前者はWeWork のここが凄いと褒めるもの。「将来は日本にも上陸?」と、日本上陸に期待している。また、後者のように資金調達の記事がともかくよく目に付くのがこの時期の特徴だ。急激な勢いで拡大していく様子がよく分かる。  2016年前半は「注目のスタートアップ」「巨額の資金調達」「注目企業(あるいは起業家)ランキング」記事などの常連といった感じだ。  それが、2016年半ば半ばぐらいになると、WeWork をメインで取り上げる記事以外にも、WeWork を比較対象とする記事が増える。WeWork は、成功して大きな評価を得ている企業として扱われて始める。

ソフトバンクの出資で日本に一般層にも知名度拡大

【2017年】  2017年1月31日、日本経済新聞に『ソフトバンク、米オフィス運営VBに投資検討 米紙報道』という記事が掲載される。ソフトバンクグループが、10億ドル(約1130億円)超の投資を検討しているという報道。WeWork に強く関わることになるソフトバンクの名前が、ここで初めて登場する。  このあと、ソフトバンク関連の話題が目につくようになる。  2月27日には、ロイターに『ソフトバンク、米シェアオフィス会社に30億ドル超投資へ』が掲載される。ソフトバンクが、WeWork への投資を確定しつつあるという報道。1月の報道から金額が3倍に増えている。  翌28日、同じくロイターは『コラム:ソフトバンク社長の投資目線、巨大ファンドが影響も』という記事を掲載。ソフトバンク・グループが、かつて投資を見送った WeWork に最大40億ドル規模を投じる可能性を米CNBCが報じたと。数年前に、アダム・ニューマンからの資金援助を断ったことなど、周辺事情がまとめられている。  そして7月。この月以降、WeWork が日本進出をしたため、日本での報道が一気に増える。日本の働き方改革の文脈でも同社の名前が出るようになる。また、中国に現地法人を設立する計画も発表した。  2017年07月18日、日経 xTECH に『共用オフィス運営のWeWorkが上陸、ソフトバンクと共同出資会社』の記事が載る。WeWork がソフトバンクと組んで日本進出することを伝える内容。  その2日後、20日には日本経済新聞に『日本上陸、米共用オフィス最大手ウィーワーク共同創業者に聞く』、さらに21日には東洋経済オンラインに『孫正義がほれた「シェアオフィス」の超絶価値』が掲載される。  WeWork は、こうした経済系の新聞やメディアでも取り上げられるようになる。日本でも注目度が高くなっていったのが2017年後半だ。  概ね絶賛の嵐の中、企業価値に疑問を呈する記事が出たのは、2017年10月24日のこと。  Wall Street Journal に『ウィーワーク、2兆円超の企業価値は幻か』が掲載された。Wall Street Journal は、このあとも引き続き警鐘を鳴らす論調の記事を多く出すことになる。
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雲行きが変わり始めた2018年
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