◆
「社会的意義があることをする」
では、「大好きなこと」なら何でもいいのでしょうか? これも答えはNOです。
これまで私は、セミナーや個人コンサルティングを通じてさまざまな人のご相談に乗ってきましたが、「今やっている仕事は向いているし楽しい。けれども何か物足りない」という方が驚くほど多くいらっしゃいます。
つまり「好きなこと」だけでは「夢」を定義することは難しいのです。ではここに欠けている視点とは何でしょうか? それは「社会的意義」という視点です。「夢」という作品を紡ぎ上げる、
縦糸が「大好きなこと」だとしたら、「社会的意義があること」が横糸に相当します。
500人以上の永続的な成功を収めている人を研究した
『ビジョナリーピープル』(英治出版)のなかで、著者のジェリー・ポラス教授らは、彼らが「世界を良くしよう」という「大義」を持っていることを指摘していますし、。300人以上の高い業績を残した人を研究したチャールズ・ガーフィールド博士はその著書
『成功者たち』(平凡社)のなかで、彼らは動機づけとなる「使命感」を持っていることを明らかにしています。この「大義」や「使命感」こそ、「社会的意義」に相当します。
人間は本質的に社会的な動物です。大好きなことに取り組むうちにそれだけでは満足できなくなり、その社会的意義を求めるようになります。
あなたはどんな人の力になりたいですか? その人たちをどのように助けたいですか? こうした問いは、あなたが本当に「意義がある」と思っていること、すなわち「夢」のひとつの形を探り出してくれます。
◆
「夢を何度も言葉にする」
これは決して抽象的な意味ではありません。さまざまな願望達成手法のほとんどが、「
目標を紙に書く」「
目標を言葉にして唱える」ということを勧めています。
実際に、アメリカのドミニカン大学で行なわれた目標達成に関する実験では、「目標をただ思っている」だけの学生と、「目標を紙に書いた」学生とでは、その目標の達成率は18%もの差がありました。ただ「目標を紙に書く」だけで、その達成率を飛躍的に高めることができるのです。
これは何故でしょうか?これには色々な理由付けができますが、最もシンプルな説明は「目標をリマインドできるから」ということです。人間は非常に忘れっぽい動物なので、遠い夢よりも目の前の仕事や、明日のランチの約束や、週末のゴルフのことで頭がいっぱいになってしまいます。結果として、夢を叶えるための行動がおろそかになってしまうのです。
しかしながら夢を言葉にしているだけで、これを防止することができます。早い話、常に野球のことを考えている野球少年と、練習のときしか野球のことを考えない少年を比べたら、どちらが野球選手になれる確率が高いか、という話です。当然、前者であることは言うまでもないでしょう。
◆
「達成のための計画を立てる」
もちろん、夢を言葉にして唱えていれば自動的に叶うほど簡単ではありません。
夢に近づいていくためには、そのための計画を立てて、できることから実行するという姿勢が肝要です。この「計画を立てる」ということが重要で、具体的な計画を立てると、ぼんやりとした「夢」が急に現実感のある「目標」に意識が変わり、行動するためのモチベーションが湧いてきます。
この「計画」の内容は、ある程度見当違いのものでもOKです。極論を言うと、この「計画策定」というステップは自分を行動に駆り立てるための起爆剤になりさえすればいいのです。
何もしなければ何も始まりません。しかしながら夢に向かって1歩踏み出すと、様々な情報や経験が手に入ります。それらをもとに、正しい方向性に修正しつつ、また新しい一歩を踏み出すことができます。こうして一歩一歩、夢に近づいていくことができるのです。
EQなどを研究しているリチャード・ボヤツィス教授は、ある作業の準備をすると前頭前野(人間を行動に駆り立てる部分)が覚醒するため、新しい行動を取り入れる際は、その道筋を事前に意識しておくことが重要だとしています。