10月10日に発売された『週刊文春』が、菅原経産相について
「秘書給与ピンハネ」「有権者買収」のほか
運転手への暴力など複数の疑惑を報じた。翌11日に菅原経産相の定例会見が予定されていたため、私は改めて経産省に電話で会見取材を申し入れたが、折返しかかってきた野澤室長からの電話が、冒頭で書いた通りの「永劫に」取材禁止との通告だった。
電話で野澤室長は、通告の理由として9月11日の取材について「
取材は難しいと伝えたにもかかわらず、約束を守らず会見場に強引に入ってきて取材した」という趣旨を告げてきた。しかし前述の通り、「取材は難しい」という野澤室長に対してこちらは再検討を要求し、野澤室長は了承して再検討のため電話を切っている。こちらは何も約束していないし、取材不可との結論も言い渡されていない。経産省への入館も会見室への入室も、一切「強引に」など行っておらず、通常通り受付で氏名を書いて入室している。
野澤室長に「事実誤認である」と告げると、野澤室長の主張は「約束を守らず会見場に強引に入ってきて取材した」から「取材についての合意形成がないまま取材した」に変わった。主張を変えるならまず、事実に反することを根拠にした処分通告について撤回し謝罪してからだと告げると、それには応じず、こちらが食い下がっていることについて「遺憾です」「失礼だ」などと言い出した。
「
合意形成がなかったのはそちらが『検討中』のまま連絡を絶ったからで、そちらの不手際である」と告げたが、野澤室長は連絡を断った理由も、自らの不手際と指摘されたことへの見解も答えなかった。そのうち野澤氏は、9月11日に「検討する」と答えたのはその日の会見の取材についてではなく、
後日の会見の取材に対応するかについての「つもり」だったと言い出した。
9月11日の野澤室長からの最後の電話の該当部分を原文通りに書き起こす。
野澤「先ほどの話なんですけども、ちょっと関係者で調整がついてなくてですね、ずっとお待たせしてしまうのも申し訳ないと思ってですね、今日はちょっと難しいということをまずお伝えしようと思いまして」
藤倉「いえいえ。ギリギリまでご確認お願いできればと思います。もう向かってますので」
野澤「はあ。わかりました。ええ」
藤倉「よろしくお願いいたします」
野澤「はい。すいません。どうも。失礼します」
これで電話は終わっている。野澤室長自身が「
今日はちょっと難しい」と、その日の会見についてのやりとりであることをはっきり口にしている。
野澤室長に「電話は録音してある」と告げ、「つもり」などという主観ではなく客観的事実に基づいて判断するように求めた。本当に後日の会見に関して交渉しているつもりであのようなやり取りをしていたのだとすれば、それは野澤室長のコミュニケーション能力の問題だと告げると、「そう捉えてもらって構わない」と言い返してきた。ならば、それを棚に上げての取材禁止という処分は横暴だと告げたが、処分は撤回されなかった。
野澤室長は、私と鈴木氏2名が入館に際して野澤室長の名を勝手に使ったと主張した。入館の際に行き先部署の担当者名を記入する欄があったので、私たちは取材についてやり取りしていた野澤氏の名を記入している。それを元に、「この人を入館させてよいか」と担当者に確認してから入館パスを出すのか、担当者名を書きさえすれば入館させるのか。それは経産省側の入館の仕組みの問題であり、私たち2名が不当な手段で入館したことにならない。
その旨を告げると、野澤氏は「入館の経緯は詳らかに知らないが」「こちらに不手際があったにせよ」といった趣旨のことを言い出した。経緯を確認せず、自らの不手際は棚に上げると、恥ずかしげもなく言い切っている。
取材禁止について、こちらが「いつまでなのか」「あなたが退職しようが死のうが政権が変わろうがずっとか」と取材禁止の期間を尋ねると、野澤室長は「
永劫です」と答えた。
「永劫」とは仏教用語だ。大谷大学のウェブサイトにある木村宣彰教授(仏教学)のコラムでは、こう説名されている。
〈仏教が説く時間のうちで最も長いのが「劫」であり〉
〈仏典では、四十里四方の大石を、いわゆる天人の羽衣で百年に一度払い、その大きな石が摩滅して無くなってもなお「一劫」の時間は終わらないと譬えている〉
〈終わりのないくらいの長い歳月を「永劫」という〉(いずれも
大谷大学ウェブサイトより)
野澤室長による出入禁止通告の電話の音声は、こちらにノーカットで公開中である。
菅原一秀経産相の会見取材について「永劫にお断り」と出禁通告されました
そもそも私と鈴木氏は、なぜ菅原経産相への取材にこだわるのか。もちろん
国民の知る権利や取材・報道の自由がその根底にあるが、そういった抽象的な話は主要な問題ではない。現状、
菅原経産相と統一教会との関係やジャーナリスト2名(これも私と鈴木氏だが)に対する虚偽告訴問題について、菅原経産相本人に直接認識を尋ねる唯一の機会が経産省での大臣会見だからだ。
菅原一秀経産相については、大臣就任以前から鈴木エイト氏が本サイト連載〈
政界宗教汚染~安倍政権と問題教団の歪な共存関係〉の中で統一教会との関係をリポートしてきた。
一連の取材との関連で、菅原経産相側は鈴木氏や私の取材を無視し、警察を使って取材妨害や威嚇を繰り返し、菅原氏への取材ではないものについてまで取材妨害を行ってきた。
参院選中の武見敬三候補(東京選挙区・自民)の演説会で藤倉・鈴木氏の入場を阻む菅原氏と秘書(7月17日、鈴木エイト撮影)
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公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か(鈴木エイト氏)
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菅官房長官登壇の選挙演説会で会場を仕切る菅原一秀衆議院議員がジャーナリストを不当排除(鈴木エイト氏)
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「建造物侵入罪」濫用で狭められる報道の自由(藤倉善郎)
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統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、「菅政権」への布石(鈴木エイト氏)
菅原経産相側は、私や鈴木氏からの取材申し入れの電話に出ずに居留守を使い、仕方がないので地元事務所に取材の申し入れをしに行くと、「こちらでお待ち下さい」と奥のソファに通しておきながら警察に110番通報したり「建造物侵入罪」だとして刑事告訴したりしている。私と鈴木氏は練馬警察署の取り調べを受け、警察は「検察に送致(書類送検)する」としている。菅原氏には公開質問状を2度送ったが無視されている。
その菅原氏が経産相に就任した。本人の自宅前には警備のポリボックスが設置され警官が常駐するようになった。自宅や事務所で待ち伏せ「突撃取材」を試みようとすれば、その都度、警察沙汰になる。
となれば定例記者会見が、正常な状態で菅原氏に質問できる唯一の機会だ。それが、前述の通り「永劫に」取材禁止とされた。
私と鈴木氏はこれまでカルト集団の取材を中心に行っており、取材を拒否される場面は少なくない。しかし将来について
事前に「出入禁止」と通告してきたことがあるのは、幸福の科学だけだ。今回の経済産業省は、7年ぶり2例目にあたる。
幸福の科学からの通告は2012年。藤倉総裁が週刊新潮で幸福の科学学園の実態をリポートしたことが理由だ。私とともに「やや日刊カルト新聞」で活動している鈴木氏も、何もしていないのに巻き添えを食って同様の扱いとなった。
幸福の科学の広報職員に、私は「未来永劫ですか?」と尋ねた。職員は「
とりあえず、今後ずっとということです」と答えた。普通だ。
これに対して今回、経産省の野澤広報室長は
「永劫だ」と言い切った。前述の通り、「永劫」は仏教用語。
経産省官僚のほうが幸福の科学よりも宗教的である。