何もしないまま、ただハグしてくれるのを「信じて」「待つ」
「NO安倍」のプラカードを持ったデモ参加者が筆者を見つめる
当然だが、アイマスクをすると目の前が真っ暗になる。自分の身の回りで何が起きているのか、どれだけの人がいるのか、何もわからない。これはとても不安だ。
しかしその不安も時間が経てば慣れてくるし、むしろ両手を広げてハグされるのを待っているので、時間が経つと腕の疲れのほうが気になってくる。そして本当に何もしないまま、ただハグしてくれるのを「信じて」「待つ」しかないのだ。完全に受け身の状態だ。
もし韓国人が日本人に対して、本当に憎くて憎くてたまらないという感情を抱いているのなら、無防備な僕を殴ることだってできる。しかもこの集会に参加している人なら、なおさら怒りの感情を持っている人が多いことだろう。
でも、そんなことは最後まで起きなかった。むしろ多くの韓国人から「ありがとう」と感謝され、1時間半の間で50人ほどの人にハグをしてもらえた。
メディア情報と現実の世界とのギャップを実際に見てほしい
キャンドル集会の参加者は5000人と発表されていた。でも筆者が見たところ、それほど多くはなかった
後に、僕のこのフリーハグ動画が日本のテレビで紹介された時、「この集会に参加したのは5000人」と紹介されていた。しかし僕が見たところ、多く見積もっても500人程度だった。
テレビの小さな画面に映る、あの「NO安倍」と書かれたポスターを掲げている集団の姿を見れば誰でも圧迫感を抱くし、怖いと思うだろう。それが「反日デモ」だと紹介されれば、「韓国中が反日なんだ」と思い込んでしまう人がいるのもわかる。
「日本のメディアは嘘をつかない、正しいことしか報道しない」と信じ込むのは危険だ。テレビの小さな画面だけで、この世界で起きている複雑なできごとを伝えられるはずもない。その画面の先にある世界の方が断然広く、真実はいつも現場にある。
そのことがわかれば、不安も消える。「キャンドル集会」で、勇気を出さずともフリーハグを行うことはできるのだ。
ぜひいちど海外に足を運んで、本当の世界を皆さんに見てほしい。すると、思ったよりも簡単に、この世界にあるメディア情報とのギャップに気づくことができるから。
<文/桑原功一>