ドキュメンタリーに特化した異色の映画祭が山形で開催。注目の中国人監督、ワン・ビンの新作「死霊魂」も上映

山形国際ドキュメンタリー映画祭が開催

会場風景

会場風景

 10月10日から17日にかけて、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」が開催される。山形県山形市を拠点としたこの映画祭は1989年にはじまり、以来2年に1回、10月に開催されている。上映会場は山形市中央公民館(アズ七日町)、山形市民会館、山形美術館、フォーラム山形、ソラリス、山形まなび館の6つとなっている。  今年の「インターナショナル・コンペティション部門」には、123か国・地域から1428作品の応募があった。その中から、15作品を厳選して上映。国内ではなかなか見ることのできない、エルサルバドルやチリのドキュメンタリーが上映される貴重な機会となっている。また「アジア千波万波」では、アジアの新進作家の作品が上映される。  今回の開催は16回目で、かつ今年は設立から30年を迎える、節目の年である。もともとは、市制施行百周年を控えた山形市に発足した「やまがた100周年記念事業推進協議会」が記念事業として映画祭の開催を検討し、ドキュメンタリー映画監督である小川紳介にアドバイスを求めたことが直接のきっかけ。

小川紳介監督の提唱で発足した市民参加型の映画祭

 当時、小川は牧野(山形県上山市)に移住して映画制作を行っており、その過程で記録映画として名高い『1000年刻みの日時計 牧野村物語』(1987年)などのいくつもの名作が誕生した。そんな彼は、希少価値という観点からドキュメンタリーに特化した映画祭の開催を勧め、かつ、市民参加型の映画祭にすることをアドバイスする。  こうして今の「ヤマガタ」の原型が生まれた。映画祭設立の立役者である小川の名は、コンペティション部門のひとつで、アジアの新進ドキュメンタリー作家の作品を紹介する「アジア千波万波」の賞において「小川紳介賞」として冠されてもいる。  私事で恐縮だが、筆者は「neoneo」というドキュメンタリー批評誌の編集委員を務めている。同媒体の発起人である伏屋博雄は、もともとは小川紳介プロダクションのスタッフであり、『ニッポン国 古屋敷村』(1982年)など数々の小川作品のプロデューサーを務めてきた。つまり、山形国際ドキュメンタリー映画祭とneoneoは一種の「血縁関係」にある(と、筆者自身は勝手に感じている)わけだが、そうしたつながりもあってか、筆者も近年の映画祭には欠かさずに足を運んできた。
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